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見逃せない検査異常

ヘモグロビン[ラボ NO.532(2023.5.発行)より]

ヘモグロビンとは

赤血球に含まれる赤色の色素で、肺の毛細血管を通過する際に酸素と結合し、二酸化炭素を放出します。酸素が結合したヘモグロビンを含んだ赤血球は、体内を流れ、酸素が少なくなった組織で、酸素を解離して組織に送り込む機能を持ち、酸素が結合すると鮮やかな赤、結合していないと暗い赤となります。パルスオキシメーターではこの色を測定して酸素飽和度を求めています。
鉄を含んだヘムとグロビンから構成され、それぞれが過不足なく存在することが正常な赤血球機能を果たすた めに必要です。
健康では血液中に、男性:14 ~ 18 g/dL、女性:12 ~ 16 g/dL のヘモグロビンを持っています。

ヘモグロビン濃度の異常

ヘモグロビン濃度が低下した状態が貧血で、顔色が青白くなり、酸素運搬能が低下するため、階段の昇り降りで容易に息切れ、動悸が起きます。ヘモグロビン濃度が 5g/dL 以下となると、全身への酸素運搬能が低下して生命にかかわるため、救急対応が必須です。
ヘモグロビン濃度が低いと言われた際には、原因を明確にしたうえで治療を受ける必要があります。
ヘモグロビン濃度と赤血球数とヘマトクリット値から、以下の値を算出し、赤血球の大きさ(MCV ヘマトクリット値/赤血球数)、赤血球に含まれるヘモグロビン量(MCH ヘモグロビン濃度/赤血球数)、赤血球 1 個当たりのヘモグロビン濃度(MCHC ヘモグロビン濃度/ヘマトクリット値)で貧血の型を判定します。

代表的な貧血

鉄欠乏性貧血:MCV、MCHC 低下。材料の鉄が不足し、ヘモグロビン量が減る。出血が続くことで起きる。女性に多い。鉄を補給することで改善する。
溶血性貧血:MCV、MCH、MCHC は通常正常。赤血球が体内で壊れる(溶血)するために血液中に含まれる赤血球が減少する。遺伝的に赤血球が壊れやすい疾患や、心臓の人工弁、自己免疫、或る種の薬剤などが原因となる。また、剣道、空手、マラソンのように体表面を打ち付けた際にも、赤血球が破壊される。
巨赤芽球性貧血:MCV が高値。ビタミン B12 や葉酸の欠乏が原因で赤血球が成熟できず、正常な赤血球が不足したもの。ビタミン B12 の吸収には胃から分泌される内因子が必要である。萎縮性胃炎で内因子が不足した場合を悪性貧血と呼ぶ。また、胃切除後にも発症する。治療には注射によりビタミン B12 の補給を行う。葉酸欠乏が原因の場合には、葉酸を経口的に補給する。。
炎症性貧血:MCV、MCHC 低下。長期間の炎症や感染症で は、体内の鉄利用障害が起こるため、ヘモグロビン合成の ための鉄供給が不足する。貧血の改善には原因を取り除く。
サラセミア:MCV MCHC 低下。グロビン遺伝子が異常となっ ている遺伝性疾患で、軽症から重症までさまざまである。

これら以外にもヘモグロビンが低値となる原因には、再生不良性貧血、白血病などの血液疾患だけでなく、腎不 全、肝硬変など多様であるので、異常値を見た際には、正しい診断とそれに応じた治療が求められます。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。