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見逃せない検査異常

血小板[ラボ NO.533(2023.6.発行)より]

血小板の働き

血液の中には、白血球、赤血球、血小板という 3 種類の血球があって、それぞれが大切な働きをしています。体の中に侵入してきた病原体と戦って体を守ってくれる白血球、肺から取り入れた酸素を体の隅々まで運ぶ赤血球、血を止める働きをする血小板です。血を止めるためには、出血した所で血液が凝固しなければなりません。今回は、凝固の主役である血小板についてのお話です。

血小板は一次止血を担う

血小板がどのように働くのかみてみましょう。血管が傷ついて出血すると、近くを通った血小板が傷ついた組織に吸着します。すると、その後を追って次々と他の血小板が駆けつけて、血小板同士が手をつないで塊になります。小さな血小板ですが、互いに手をつなぎ合うことによって止血を行います。これを一次止血といいます。次に、血小板同士の隙間を埋めるように、血液のお餅(フィブリン)が形成されます。ちょうど、レンガを埋める漆喰のように、フィブリンは血小板血栓を強固なものにします。これを二次止血といいます。

血小板の検査

通常、血液 1μL(一つの辺が 1mm の立方体)中に、約 15-35 万の血小板があります。血小板の数が非常に少なくなると(5 万 /μL 以下)、出血したときに止血ができず、出血傾向を示します。血小板数が 10万 /μL 以下の場合は血小板減少とされ、注意が必要です。また、逆に45 万 /μL 以上は血小板増加とされます。では、血小板の検査で異常を指摘された場合、どのようなことが考えられるのでしょうか?

血小板が少ないとき

血小板が少ないとき、まず偽性血小板減少症を除外します。これは、検査の採血管の中で血小板が固まってしまうため、検査において血小板数が低くなってしまう現象です。そのようなときは、他の採血管を使うなどして再検査をすることが多いです。実際に血小板が少ないときには、重大な病気が隠れている可能性があるので、詳しい検査が必要です。血小板が減少する原因には、以下のような病態があります。
1)血小板の産生低下(再生不良性貧血・白血病・骨髄異形成症候群などの血液疾患、重症肝障害、ウイルス感染など)
2)血小板の消費亢進(播種性血管内凝固症候群、血栓性血小板減少性紫斑病など)
3)血小板が壊されてしまう(免疫性血小板減少性紫斑病、脾腫など)

血小板が多いとき

血小板増加の原因は、原発性(他の原因がない)と、反応性(何か他の原因があって二次的に起こる)に分けられます。
原発性の血小板増多症は、骨髄増殖性疾患と呼ばれる疾患群で、骨髄で血小板の産生が亢進しています。放っておくと、血小板が増えすぎて血栓症を起こすことがあるので、専門医の元で加療が必要です。
反応性の血小板増多症の原因には、鉄欠乏性貧血、炎症、悪性腫瘍などがあります。鉄欠乏性貧血は、女性に多くみられますが、同時に血小板数が高くなることがあります。鉄欠乏性貧血の際に、赤血球を増やす働きをするエリスロポエチンというホルモンが分泌されるのですが、血小板にも少し作用してしまうため、血小板が増加するのです。このような反応性の血小板増多症の場合は、原因となる疾患が改善すると、血小板数は正常に戻ります。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。