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ペプシノゲンとペプシコーラはまったく関係がないわけではありませんが、影響はまったくありません!!
皆様よくご存知の胃から分泌される消化酵素ペプシン(蛋白分解酵素)の前段階で、未だ酵素活性を持たない前駆物質としてペプシノゲンは胃壁細胞内で産生されています。ほとんどは胃の内部に分泌されますが、およそ1%が血中に入るため血液中のペプシノゲンが測定できます。
一方、消化不良を助ける水薬として発売された当初に含まれていたペプシンに因んで名付けられたペプシコーラですが、現在は処方が変わりペプシンは含まれていません。たとえペプシンやペプシノゲンを含んだ食物を口から摂取したとしても、消化されるので影響はありません。
日本人の胃がんの原因の多くがヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori:俗称ピロリ菌)によることが判明した現在、胃カメラにより組織を採ってピロリ菌活性を測定したり、呼気試験により活性を測定したり、血中の抗体や糞便中の抗原を測定する方法等でピロリ菌を検出し、存在が確認できたら胃がんを防ぐために除菌を行うことが多くなりました。
しかし、胃の検診としては、胃カメラによる肉体的負担やバリウムを用いた胃透視の被爆問題などに比べて、血液だけで調べられる血中ペプシノゲンの検査が一般的に行われています。
ペプシノゲンには免疫学的性質の違うペプシノゲンI(以下、PI)とペプシノゲンII(以下、PII)があり、PIは胃底腺から分泌され、PI Iは胃や十二指腸全体から分泌されます。この二つの比(I/II比)とPIの量を組み合わせることで胃の粘膜の状態が推測できるのです。ペプシノゲン検査で健診を行うことで胃の精密検査に進むべき人が判断でき、多くの人に被爆の危険や肉体的精神的負担をかけることが少なくなりました。
健常者はPIが一般的に70以上、I/II比が3以上です。
PIの上昇・低下、I/II比の上昇・低下により、胃炎・萎縮性胃炎の程度を判断し、胃がんのリスクの高いグループを判定します。
このハイリスクグループの検出率は、バリウムを用いたその検出率と遜色はありませんが、必ずしも一致率(どちらの検査も異常)は高くなく、それぞれの健診における有用性(正しく診断できるかどうか)はほぼ同等といえます。しかし、採血によって検査のできるペプシノゲンの簡便性は、バリウムの負荷と被爆のリスクを考えると胃の健診項目として捨てがたいものです。
●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。