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新規保険収載検査

SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出 抗リン脂質抗体検査(抗カルジオリピンIgG/IgM 抗体、及び抗β2 グリコプロテインⅠ IgG/IgM 抗体の測定)

令和 2年 9月8日より保険適用D023 微生物核酸同定・定量検査 区分:E1(既存)
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出
1)Ampdirect(TM) 2019-nCoV 検出キット
保険点数・採取した検体を、国立感染症研究所が作成した「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス 2013-2014版」に記 載されたカテゴリーB の感染性物質の規定に従って、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合:1,800点
・それ以外の場合:1,350点
製品名Ampdirect(TM) 2019-nCoV 検出キット
製造販売元株式会社島津製作所
使用目的生体試料中のSARS-CoV-2 RNAの検出(SARS-CoV-2感染の診断補助)
使用目的に関連する使用上の注意添付文書の【操作上の注意】〈臨床性能試験成績〉の内容を熟知し、本品の有用性を理解した上で検体種を選択す ること。
測定方法1step RT-PCR法
検 体検査に用いる検体については、厚生労働省より公表されている「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査 の指針」を参照すること。
有 用 性SARS-CoV-2は、2019年12月に中国湖北省武漢市で発生した原因不明の肺炎患者より分離され、ゲノム配列解析され、人に感染するコロナウイルスの7番目として報告された。多くの症例で発熱、呼吸器症状(咳嗽、咽頭痛、鼻汁、鼻閉など)、頭痛、倦怠感などがみられ、中国では発症から医療機関受診までの期間は約5日、入院までの期間は約7日と報告されており、症例によっては発症から1週間程度で重症化してくるものと考えられ、さらに重症化する事例では10日目以降に集中治療室に入室という経過をたどる傾向がある。中国武漢で平均潜伏期間が約5日との推定があり、発症前に感染させる事例が報告されている。また、国内クルーズ船での無症候性の割合推定(17.9%)についても報告されており、疑い患者において新型コロナウイルス検出PCR 検査を適切に実施することによる早期診断と拡大防止を行うことが重要である。
PCR検査等による病原体遺伝子検出で陽性となった場合にSARS-CoV-2感染の確定診断となり、感染症病床等にて、重症度別の支持療法が可能となる。また、初期症状がインフルエンザや感冒、熱中症と似ており、院内感染防止の上でもPCR 検査が有用である。
本品は、検体由来の阻害物質の影響を抑制する成分を入れることにより、RNA精製をすることなくRT-PCR を可能としている。他の一般的なPCR検査で必要となるRNA 抽出の工程を行う必要がなく、RNA 検出検査の省力化、時間短縮ができる。
留意事項SARS-CoV-2 核酸検出は、国立感染症研究所が作成した「病原体検出マニュアル2019-nCoV」に記載されたもの若しくはそれに準じたもの又は体外診断用医薬品のうち、使用目的又は効果として、SARS-CoV-2の検出(COVID-19の診断又は診断の補助)を目的として薬事承認又は認証を得ているものにより、COVID-19の患者であることが疑われる者に対し COVID-19の診断を目的として行った場合又は COVID-19の治療を目的として入院している者に対し退院可能かどうかの判断を目的として実施した場合に限り算定できる。ただし、感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするための積極的疫学調査を目的として実施した場合は算定できない。なお、検査に用いる検体については、厚生労働省の定める新型コロナウイルス感染症の検査に係る指針を参照すること。
採取した検体を、国立感染症研究所が作成した「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス 2013-2014版」に記載されたカテゴリーBの感染性物質の規定に従って、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合は、本区分の「14」SARSコロナウイルス核酸検出の所定点数4回分を合算した点数を準用して算定し、それ以外の場合は、同点数3回分を合算した点数を準用して算定する。なお、採取した検体を、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合は、検査を実施した施設名を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
COVID-19の患者であることが疑われる者に対し、診断を目的として本検査を実施した場合は、診断の確定までの間に、上記のように合算した点数を 1 回に限り算定する。ただし、発症後、本検査の結果が陰性であったものの、COVID-19以外の診断がつかず、本検査を再度実施した場合は、上記のように合算した点数をさらに1回に限り算定できる。なお、本検査が必要と判断した医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。 COVID-19の治療を目的として入院している者に対し、退院可能かどうかの判断を目的として実施した場合は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」(令和2年6月 25日健感発 0625第5号)の「第1退院に関する基準」に基づいて実施した場合に限り、1回の検査につき上記のように合算した点数を算定する。なお、検査を実施した日時及びその結果を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
参考資料1)Zhu N, et al. A novel coronavirus from patients with pneumonia in China, 2019. N Engl J Med. 2020;382(8): 727-33.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa2001017
2)厚生労働省「新型コロナウイルス感染症診療の手引きCOVID-19 第2版」
https://www.mhlw.go.jp/content/000631552.pdf
3)Li Q, et al. Early transmission dynamics in Wuhan, China, of novel coronavirus-infected pneumonia. NEngl J Med. 2020. Epub ahead of print.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa2001316
4)Wei WE, et al. Presymptomatic transmission of SARS-CoV-2 ? Singapore, January 23-March 16, 2020.MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2020; 69: 411-5.
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6914e1.htm
5)Tong Z-D, et al. Potential presymptomatic transmission of SARS-CoV-2, Zhejiang Province, China,2020. Emerg Infect Dis 2020; 26: 1052-4.
https://europepmc.org/article/med/32091386
6)Estimating the asymptomatic proportion of coronavirus disease 2019 (COVID-19) cases on board the Diamond Princess cruise ship, Yokohama, Japan, 2020
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7078829/pdf/eurosurv-25-10-1.pdf
7)日本臨床救急医学会、他3 学会「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/news/gakkai/covid19_tebiki_2007.pdf
製品ページURLhttps://www.shimadzu.co.jp/reagents/covid-19/index.html
文責:株式会社島津製作所/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会
令和 2年 7月より保険適用D014 自己抗体検査 区分E3(新規項目)
抗リン脂質抗体検査(抗カルジオリピンIgG/IgM 抗体、及び抗β2 グリコプロテインⅠ IgG/IgM 抗体の測定)
抗リン脂質抗体検査(抗カルジオリピンIgG/IgM 抗体、及び抗β2 グリコプロテインⅠ IgG/IgM 抗体の測定)
2)クアンタフラッシュ APS
保険点数696点
製品名クアンタフラッシュ APS
製造販売元アイ・エル・ジャパン株式会社
使用目的血漿又は血清中の抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体及び抗β2グリコプロテインⅠ抗体)の測定(抗リン脂質抗体症候群の診断補助)
測定方法化学発光免疫測定法(CLIA)
検 体血漿(クエン酸三ナトリウム)又は血清
有 用 性従来の抗カルジオリピン IgG抗体と、本品による4抗体同時測定(抗カルジオリピン IgG/IgM、抗β2グリコプロテインIIgG/IgM)による抗リン脂質抗体症候群(APS)の感度は、それぞれ69%、87.9%であった。非APSの特異度はそれぞれ92.5%、84.3%であった(本品の臨床性能試験結果より)。
説 明抗リン脂質抗体症候群(APS)は、部位に関係無く静脈・動脈に血栓が生じ、それによって脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓、習慣性流産など様々な症状を発症する疾患である。原因は不明で、本邦では原発性APSおよびSLEなどに併発する続発性APSがそれぞれ約1万人と推定されている。国際血栓止血学会(ISTH)による診断基準は臨床基準(症状)と検査基準で構成されており、いずれの基準も満たす場合にAPSと診断される。
検査基準は、1999年に札幌基準が発表された以後2度改訂され(2006年、2018年)、現在はループスアンチコアグラント(LAC)、抗カルジオリピン(aCL) IgG/IgM、抗β2グリコプロテインI (aβ2GPI) IgG/IgM抗体のいずれかが12週以上の間隔で2回以上陽性を示すこととされている。また、測定法がELISAに加えて自動化法が追加され、aCL抗体の抗原としてカルジオリピンにヒト由来のβ2GPIを結合させたものを使用することがISTHのガイドラインに示されている。ISTHではLAC、aCL抗体、aβ2GPI抗体のいずれも陽性を呈する場合、血栓症状を発するリスクが高いとしている。
本邦では、2種類の測定法によるaCL IgGの検査が抗カリジオリピン抗体、抗カルジオリピンβ2グリコプロテインⅠ複合体抗体という名称でそれぞれ保険適用されていた事から、後者がaβ2GPI抗体の代用として検査基準に記載されてきた。
本品による4抗体同時測定が保険適用されたことで、本邦でも国際基準に沿った内容でAPSを診断する事が可能となる。
APSは脳梗塞など重篤な症状を来すリスクがあることから様々な検査の実施が推奨されていることから、今回の4抗体測定が保険適用されたことの臨床的意義は高い。
留意事項(28) 抗リン脂質抗体検査(抗カルジオリピンIgG/IgM 抗体、及び抗β2 グリコプロテインI IgG/IgM 抗体の測定)は、D014「27」を準用して算定する。
ア 抗リン脂質抗体症候群の診断を目的として、CLIA 法を用いた免疫学的検査で抗カルジオリピン抗体及び抗β2グリコプロテインⅠ抗体の測定を行った場合に、「27」抗カルジオリピン抗体の所定点数の3回分を合算した点数を準用して一連の治療につき2回に限り算定する。
イ 「25」の抗カルジオリピンβ2グリコプロテインⅠ複合体抗体、「27」の抗カルジオリピン抗体、及び(28)の検査のいずれか2つ以上を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
参考資料1)Miyakis S, et al. J Thromb Haemost 2006; 4: 295-306.
2)Devreese KMJ. Journal of Thrombosis and Haemostasis 2018; 16: 809-13.
3)奥 健志, 他. 日本臨床免疫学会会誌 2015; 38: 157-63.
製品ページURLhttps://werfen.com/jp/ja/kuantafuratsushiyu
文責:アイ・エル・ジャパン株式会社/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会

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