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新規保険収載検査

SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出 RAS遺伝子変異(血漿)

令和 2年 7月2日より保険適用 D023 微生物核酸同定・定量検査区分:E1(既存項目)
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出
1)ジーンキューブ(R) SARS-CoV-2
保険点数 1,800点(1,350点)
※算定に関しては、下記【留意事項】を参照
製品名 ジーンキューブ(R) SARS-CoV-2
製造販売元 東洋紡株式会社
使用目的 生体試料中のSARS-CoV-2 RNAの検出(SARS-CoV-2感染の診断の補助)
測定方法 one-step RT-PCR法による標的核酸増幅および蛍光標識プローブ(QProbe)を用いた標的核酸検出
検 体 生体試料(鼻咽頭拭い液、喀痰、唾液など)
説 明 新型コロナウイルス(SARS-CoV2)は、2019年12月、中華人民共和国において確認され、2020年3月11日にWHO(世界保健機関)よりパンデミックの状態にあると表明されたウイルスである。本品はSARS-CoV-2に特異的な遺伝子配列をターゲットとするone step RT-PCR法により、迅速にSARS-CoV-2 RNAの検出が可能な検査試薬である。
鼻咽頭拭い液又は喀痰を含む25検体(陽性10例、陰性15例)、およびSARS-CoV-2ウイルスを50~100コピーとなるようにスパイクした唾液検体11例、100~200コピーとなるようスパイクした唾液検体12例、陰性唾液検体15例を「病原体検出マニュアル2019-nCoV(国立感染症研究所)」に従って抽出したRNAについて、「病原体検出マニュアル2019-nCoV(国立感染症研究所)」に従ったRT-PCR法とGENECUBEにて本試薬を用いて検出した。その結果、全 体一致率は100%と良好であった。
留意事項 (1)~(16)(略)
(17)SARS-CoV-2 核酸検出は、国立感染症研究所が作成した「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」に記載されたもの若しくはそれに準じたもの又は体外診断用医薬品のうち、使用目的又は効果として、SARS-CoV-2 の検出(COVID-19 の診断又は診断の補助)を目的として薬事承認又は認証を得ているものにより、COVID-19の患者であることが疑われる者に対しCOVID-19の診断を目的として行った場合又はCOVID-19の治療を目的として入院している者 に対し退院可能かどうかの判断を目的として実施した場合に限り算定できる。ただし、感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするための積極的疫学調査を目的として実施した場合は算定できない。なお、検査に用いる検体については、国立感染症研究所が作成した「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」を参照すること。
採取した検体を、国立感染症研究所が作成した「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス2013-2014版」に記載されたカテゴリーBの感染性物質の規定に従って、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合は、本区分の「14」SARSコロナウイルス核酸検出の所定点数4回分を合算した点数を準用して算定し、それ以外の場合は、同点数3回分を合算した点数を準用して算定する。なお、採取した検体を、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合は、検査を実施した施設名を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
COVID-19 の患者であることが疑われる者に対し、診断を目的として本検査を実施した場合は、診断の確定までの間に、上記のように合算した点数を1回に限り算定する。ただし、発症後、本検査の結果が陰性であったものの、COVID-19 以外の診断がつかず、本検査を再度実施した場合は、上記のように合算した点数をさらに1回に限り算定できる。なお、本検査が必要と判断した医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
COVID-19 の治療を目的として入院している者に対し、退院可能かどうかの判断を目的として実施した場合は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」(令和2年6月25 日健感発0625 第5号)の「第1退院に関する基準」に基づいて実施した場合に限り、1回の検査につき上記のように合算した点数を算定する。なお、検査を実施した日時及びその結果を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
(18)~(27)(略)
文責:東洋紡株式会社/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会
令和 2年 8月より保険適用 D004-2 悪性腫瘍組織検査区分:E3(新項目・改良項目)
RAS遺伝子変異(血漿)
RAS遺伝子変異(血漿)
2)OncoBEAM(TM) RAS CRC キット
保険点数 7,500点
製品名 OncoBEAM(TM) RAS CRC キット
製造販売元 シスメックス株式会社
使用目的 血漿から抽出したゲノム DNA中のRAS(KRAS及び NRAS)遺伝子変異の検出(セツキシマブ(遺伝子組換え)又はパニツムマブ(遺伝子組換え)の結腸・直腸癌患者への適応を判定するための補助に用いる)
●重要な基本的注意
1. 腫瘍由来DNAが血漿中にじゅうぶんに漏出していない患者では、腫瘍組織にRAS遺伝子変異が存在しても、本検査で野生型と判定される可能性がある。特に肺転移のみを有する患者では、可能な限り腫瘍組織を用いた検査の実施を考慮する。
2. 本検査でカットオフ値近傍において変異型と判定された患者では、腫瘍組織にRAS遺伝子変異が存在しない可能性を否定できない。このような患者では、腫瘍組織を用いた検査の実施についても考慮する。
3. 上記を踏まえ、本検査は腫瘍組織を用いる検査と完全に置き換わらないことをじゅうぶんに理解した上で、本検査を実施する。
測定方法 高感度デジタルPCR 法とフローサイトメトリー法
BEAMing(Beads, Emulsions, Amplification and Magnetics)法を測定原理とする高感度デジタルPCR により、血漿から抽出したcfDNA(血中循環DNA:cell free DNA)中のRAS遺伝子変異(KRAS及びNRAS遺伝子のエクソン2、3、4領域の変異)を検出する。
検 体 全血
有 用 性 本品は、血漿から抽出したゲノムDNA中のRAS(KRAS 及びNRAS)遺伝子変異の検出する体外診断用医薬品である。本品の血漿から抽出したゲノムDNA中のRAS(KRAS 及びNRAS)遺伝子変異の検出は、セツキシマブ(遺伝子組換え)及びパニツムマブ(遺伝子組換え)による治療の適用の判断を補助することを目的として用いる。>
説 明 進行・再発大腸癌の薬物療法における抗EGFR抗体薬セツキシマブ(遺伝子組換え)及びパニツムマブ(遺伝子組換え)は、多くの大腸癌患者の腫瘍組織で高発現が認められるEGFRに高い親和性で結合し、リガンドの結合を阻害すること及びEGFRの内在化作用により抗腫瘍効果を発揮するとされている1)~3)。しかし、セツキシマブ(遺伝子組換え)及びパニツムマブ(遺伝子組換え)はRAS(KRAS 及びNRAS)遺伝子変異がある場合には、治療効果が期待されないことが報告されており、セツキシマブ(遺伝子組換え)及びパニツムマブ(遺伝子組換え)の添付文書の効能・効果に関連する使用上の注意には、「RAS(KRAS 及びNRAS)遺伝子変異の有無を考慮した上で、適応患者の選択を行うこと」が記載されている4)5)。大腸癌治療ガイドラインにおいても、一次治療の方針を決定する際のプロセスにRAS遺伝子検査が記載されている6)。また、日本臨床腫瘍学会のガイダンスでは、抗EGFR抗体薬の投与前(抗EGFR抗体の再投与を含める)にctDNA※(血中循環腫瘍DNA)を用いたRAS遺伝子検査を行うことは、抗EGFR抗体薬の適用の判定のために有用であると考えられている。加えて、ctDNA※によるRAS遺伝子変異の有無について、経時的な複数回測定によるモニタリングを行いながら、抗EGFR抗体薬の再投与のタイミングを決定するという治療戦略が期待されている7)。生検が難しい場合でも、複数回の検体採取が可能な血液を対象としてRAS遺伝子変異状態を調べることができるリキッドバイオプシー検査の実用化が望まれてきた。
本品を用いた国内多施設臨床性能試験の結果では、大腸がん患者の血液を検体として、血液中に遊離したDNA(cfDNA)を対象に、BEAMing法を用いてRAS遺伝子変異を高感度に検出した8)。これにより、従来の腫瘍組織を用いた RAS遺伝子検査と同等の判定結果の提供が可能であることが報告された。
生検が困難な患者に対して身体的・精神的負担が少なく、かつ必要なタイミングでRAS遺伝子検査を実施することで、抗EGFR抗体薬投与の最適化が期待できる。しかし一方で、腫瘍由来DNAが血液中に十分に漏出していない患者では、腫瘍組織にRAS遺伝子変異が存在しても、本品を使用した検査で野生型と判定される可能性がある。特に肺転移のみを有する患者では、可能な限り腫瘍組織を用いた検査を優先させる必要がある。
※ ctDNA:circulating tumor DNA。がん患者におけるcfDNAは腫瘍由来のものも含まれることからctDNAと呼ばれることも多い。
(参考)臨床性能試験成績8)
進行・再発大腸癌の患者を対象として臨床性能試験を実施し、国内8 施設において352 例の同意を取得した。
(1)本品の検査成功率
有効性解析対象の288例について、測定対象コドンの何れかで結果が得られなかった「RAS 不明」は8例(2.8 % :8/288)であった。
(2)本品と比較対照法の判定一致率
有効性解析対象の288例のうち「RAS 不明」の8例を除いた280例において、本品(血漿から得られたゲノムDNAを用いる本キット)と比較対照法(腫瘍組織から得られたDNAを用いるBEAMing 法を用いたRAS遺伝子変異検出法)との判定一致率は86.4 %であった。
(3)本品と既承認品検査との判定一致率
同意取得された352例のうち本品と既承認品検査(腫瘍組織から得られたDNAを用いる MEBGEN(TM) RASKET キット)で結果が得られた266例における判定一致率は84.6 %であった。
(4)肺のみ転移の症例における本品と比較対照法の判定一致率
有効性解析対象の288例から「RAS不明」の8例を除いた280例のうち、肺のみに転移を有していた31例における、本品と比較対照法(腫瘍組織から得られたDNAを用いるBEAMing 法を用いたRAS遺伝子変異検出法)との判定一致率は64.5 %であった。
留意事項 D004-2 悪性腫瘍組織検査の留意事項に追加
(16)RAS遺伝子検査(血漿)は、「1」の「ロ」処理が複雑なものと、「イ」処理が容易なものの「(1)」医薬品の適応判定の補助等に用いるものの所定点数を準用して算定する。
ア. 本検査は、大腸癌患者の血漿を検体とし、抗悪性腫瘍剤による治療法の選択を目的として、高感度デジタルPCR法とフローサイトメトリー法を組み合わせた方法により行った場合に、患者1人につき、1 回に限り算定できる。ただし、再度治療法を選択する必要がある場合にも算定できる。なお、本検査の実施は、医学的な理由により、大腸癌の組織を検体として、「1」の「イ」処理が容易なもののうち、(2)のイに規定する大腸癌におけるRAS遺伝子検査又は(3)のカに規定する大腸癌におけるK-ras遺伝子検査を行うことが困難な場合に限る。
イ. 本検査を実施した場合は、大腸癌の組織を検体とした検査が実施困難である医学的な理由を診療録及び診療報酬明細書に記載する。
ウ. 本検査と、大腸癌の組織を検体として、「1」の「イ」処理が容易なもののうち、(2)のイに規定する大腸癌におけるRAS遺伝子検査又は(3)のカに規定する大腸癌におけるK-ras遺伝子検査を同一月中に併せて行った場合には、主たるもののみ算定する。
参考資料 1)Fan Z et al. J Biol Chem. 1994; 269:27595-602.
2)Goldstein NI et al. Clin Cancer Res. 1995; 1:1311-8.
3)Yang XD et al. Cancer Res. 1999; 59:1236-43.
4)セツキシマブ (遺伝子組換え) 製剤 添付文書.
5)パニツムマブ(遺伝子組換え)添付文書.
6)大腸癌研究会, 大腸癌治療ガイドライン 医師用2019年版.
7)日本臨床腫瘍学会, 大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス 第4版.
8)Bando H et al. Br J Cancer. 2019; 120:982-6.
文責:シスメックス株式会社/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会

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