1. HOME
  2. 臨床検査医の方へ
  3. 新規保険収載検査
  4. SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出 百日咳菌抗原定性

臨床検査医の方へ

TOPICS

新規保険収載検査

SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出 百日咳菌抗原定性

令和 3年 4月14日より保険適用 D023 微生物核酸同定・定量検査 区分E1(既存項目)
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出
1)DetectAmp(TM) SARS-CoV-2 RT-PCRキット
保険点数 ・採取した検体を、カテゴリーB の感染性物質の規定に従って、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合:1,800点
・それ以外の場合:1,350点
製品名 DetectAmp(TM) SARS-CoV-2 RT-PCRキット
製造販売元 シスメックス株式会社
使用目的 生体試料中のSARS-CoV-2 RNAの検出(SARS-CoV-2感染の診断の補助)
使用目的に関連する使用上の注意 【操作上の注意】、【臨床的意義】の内容を熟知し、本品の有用性を理解した上で、検体種を選択してください。
測定方法 RT-PCR法
検 体 生体試料中から抽出されたウイルスRNA
有 用 性 本品は、実質的な公定法である国立感染症研究所(以下、感染研)の検査法にて指定のSARS-CoV-2に特異的な標的配列(N2)に準拠したプライマーを用いてOne-StepのRT-PCR法で簡便に短時間での測定ができ、並びに共存物質や類似のウイルス性の呼吸器感染症等への交差反応をせずに特異的にSARS-CoV-2を検出できる体外診断用医薬品であり、SARS-CoV-2感染の診断補助として有用である。
また、臨床性能試験成績については、以下の通りである。
1.購入検体
鼻咽頭ぬぐい液の購入検体を用いて、本品と感染研「病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver. 2.9.1」に準拠した手法(以下、感染研法)との比較試験を行った104検体の結果は、判定一致率99.0 %(103/104)、陽性一致率98%(53/54)、陰性一致率(50/50)であった。なお、本試験に使用した陽性検体には、20 copies/test未満のものが20検体、20~200 copies/testのものが11検体含まれる。
2.模擬検体
鼻腔ぬぐい液、唾液の陰性検体、及び陰性検体に鼻咽頭ぬぐい液の陽性検体をスパイクした模擬陽性検体を用いて、本品と感染研法との比較試験を行った。その結果、鼻腔ぬぐい液検体、唾液検体共に陽性一致率100 %(10/10)、陰性一致率100 %(15/15)の結果となった。なお、本試験に使用した陽性検体には、鼻腔ぬぐい液は20copies/test未満のものが2検体、100~200 copies/testのものが2検体含まれ、唾液は20 copies/test未満のものが2検体、100~200 copies/testのものが1検体含まれている。
説 明 国立感染症研究所の報告によると、人に感染症を引き起こすコロナウイルスはこれまで6種類が知られており、深刻な呼吸器疾患を引き起こすことがあるSARS(重症急性呼吸器症候群)-CoVとMERS(中東呼吸器症候群)-CoV以外は、感染しても通常の風邪等の重度でない症状にとどまるとされていた。しかしながら、2019年12月に中華人民共和国の武漢市で原因不明の肺炎患者が発生していることが報告された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、SARS コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)によって引き起こされるウイルス性呼吸器疾患で、2021年2月現在においてもパンデミック(世界的大流行)が続いている。本邦においては2020年2月1日に指定感染症及び検疫感染症に指定され、公衆衛生上の喫緊の課題となっている。感染拡大防止対策として、有症状者を含む患者及び周辺への早期診断を目的とした検査ニーズは日々増大しており、検査体制の拡充が望まれている。
留意事項 SARS-CoV-2 核酸検出は、国立感染症研究所が作成した「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」に記載されたもの若しくはそれに準じたもの又は体外診断用医薬品のうち、使用目的又は効果として、SARS-CoV-2 の検出(COVID-19の診断又は診断の補助)を目的として薬事承認又は認証を得ているものにより、COVID-19 の患者であることが疑われる者に対し COVID-19 の診断を目的として行った場合又は COVID-19 の治療を目的として入院している者に対し退院可能かどうかの判断を目的として実施した場合に限り算定できる。ただし、感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするための積極的疫学調査を目的として実施した場合は算定できない。なお、検査に用いる検体については、国立感染症研究所が作成した「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」を参照すること。採取した検体を、国立感染症研究所が作成した「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス 2013-2014 版」に記載されたカテゴリーB の感染性物質の規定に従って、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合は、本区分の「14」SARSコロナウイルス核酸検出の所定点数4回分を合算した点数を準用して算定し、それ以外の場合は、同点数3回分を合算した点数を準用して算定する。なお、採取した検体を、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合は、検査を実施した施設名を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。COVID-19 の患者であることが疑われる者に対し、診断を目的として本検査を実施した場合は、診断の確定までの間に、上記のように合算した点数を 1 回に限り算定する。ただし、発症後、本検査の結果が陰性であったものの、COVID-19 以外の診断がつかず、本検査を再度実施した場合は、上記のように合算した点数をさらに1回に限り算定できる。なお、本検査が必要と判断した医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
COVID-19 の治療を目的として入院している者に対し、退院可能かどうかの判断を目的として実施した場合は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限 の取扱いについて(一部改正)」(令和2年6月 25 日健感発 0625 第5号)の「第1 退院に関する基準」に基づいて実施した場合に限り、1回の検査につき上記のように合算した点数を算定する。なお、検査を実施した日時及びそ の結果を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
製品関連URL https://products.sysmex.co.jp/products/genetic/BY306297/Index.html 新型コロナウイルス検出試薬 (RT-PCR法)の製造販売承認取得について
文責:シスメックス株式会社/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会
令和 3年 5月1日より保険適用 D012 感染症免疫学的検査 区分E3(新項目)
百日咳菌抗原定性
百日咳菌抗原定性
2)リボテスト 百日咳
保険点数 217点
製品名 リボテスト 百日咳
製造販売元 旭化成ファーマ株式会社
主な対象 百日咳菌感染を疑う患者
主な測定目的 鼻咽頭拭い液中の百日咳菌抗原の検出(百日咳菌感染の診断の補助)
測定方法 イムノクロマト法
検 体 鼻咽頭拭い液
有 用 性 本検査は、イムノクロマト法により鼻咽頭拭い液中の百日咳菌抗原を検出し、百日咳菌感染の診断を補助する抗原定性検査である。特別な検査機器や設備を必要とせず、本検査薬のみで判定時間15分と迅速に結果が出る。
百日咳菌感染を疑う患者に対して11施設で臨床性能試験を実施した。PCR法に対する本キットの一致率は、陽性一致率:86.4%(19/22)、陰性一致率:97.1%(168/173)、全体一致率:95.9%(187/195)であった。培養法に対する本キットの一致率は、陽性一致率:72.2%(13/18)、陰性一致率:94.0%(158/168)、全体一致率:91.9%(171/186)であった。
説 明 百日咳は主に百日咳菌(Bordetella pertussis)により引き起こされる呼吸器感染症である。百日咳菌の感染力は非常に強いため、百日咳菌の感染を見逃すことにより症状の重症化及び感染拡大が進む。特にワクチン接種前の乳幼児で重篤化しやすく、死亡例も報告されている。近年ではワクチンの効果が減弱した小児、青年、成人で感染が拡大し、乳幼児への感染源となっている1)-4)。これまでに保険適用のある百日咳の検査は、培養検査、遺伝子検査、血清学的検査がある1)5)。しかし、いずれの検査も専用の機器や設備、専門知識が必要なため、検査へのアクセスが難しいという課題があった。また、百日咳菌は極めて強い感染力を持つとされているため、初診時で迅速に結果が得られる検査が重要とされる6)。
本キットは、培養検査や遺伝子検査の実施体制が整備されていない環境、集団感染の発生時等の緊急に検査が必要な場面で活用されることが考えられる。また、迅速に検査結果が得られることで、検査結果に基づく抗菌薬の適正使用に役立つことが期待される6)。
留意事項 1.関連学会が定めるガイドラインの百日咳診断基準における臨床判断例の定義を満たす患者に対して、イムノクロマト法により百日咳菌抗原を測定した場合は、区分番号「D012」感染症免疫学的検査の「41」レジオネラ抗原定性(尿)を準用して算定する。
2.本検査と区分番号「D023」微生物核酸同定・定量検査の「10」百日咳菌核酸検出又は同区分「17」ウイルス・細菌核酸多項目同時検出を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
参考資料 1)国立感染症研究所. 百日せきワクチンに関するファクトシート. 2017年2月10日.
2)日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会. 小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017. 小児呼吸器感染症診療ガイドライン作成委員会. 尾内一信, 他(監). 東京: 協和企画; 2016.
3)日本小児呼吸器学会. 小児の咳嗽診療ガイドライン. 吉原重美, 他(監). 東京: 診断と治療社; 2014.
4)日本呼吸器学会. 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019. 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019 作成委員会(編).東京: メディカルレビュー社; 2019.
5)国立感染症研究所. 病原体検出マニュアル 百日咳 第3.0版. 2020年9月改訂.
6)日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会. 百日咳菌抗原キットの臨床活用に関して. 小児呼吸器感染症診療ガイドライン作成委員会. 2020年12月2日.
製品関連URL https://www.asahi-kasei.co.jp/shindan/
文責:旭化成ファーマ株式会社/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会

関連記事