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受診者一人ひとりには、個人の基準値があります。体温の高い人、低い人がいるのと同じように、健康な状態であっても、いつも測定値が高め、低めを示すことがあります。基準範囲は統計的に、健康人の95%を表現するものですから、高値の2.5%、低値の2.5%に属する人もいるわけです。不幸なことに、外れた人は毎回、要観察、要精密と判定されることになります。逆に判定基準値内であっても変動としてとらえなければならないこともあります。数回受診すれば個人の測定値、変動の幅が推測され、過去の測定値との比較、経過観察結果、精密検査結果などを参考に判定することで、無駄な検査が省略されることもあります。
また健診の分野でも病気の診断を行う場合と同様に、測定値だけでなく、既往歴、現在治療中の病気、受診者の生活環境、環境変化の有無、過去の測定値などと比較しながら医師が総合的に判定します。受診者から確認を取りますが、問診票は正直に、正確に書いていただきたいと思います。また検査の1項目の異常のあるなしで診断しているわけではありません。むしろ1項目だけの異常は、数項目に異常がみられる場合に比べて、病気に結びつくケースは少ないといわれています。
検査値の変動は病気だけではなく、加齢、環境の変化、運動の習慣、運動前後、受診時の健康状態、例えば軽い風邪、歯の治療中、生理中とかで影響を受けます。またサプリメントを含む常用薬、喫煙の有無、飲酒量、嗜好品によって変動することがあります。採血は早朝空腹時が原則です。
検査の測定上の変動なのか、また加齢などの生理的な変動なのか、その人の測定値として許容できる範囲内にあるかどうかが問題です。機器・試薬の精度の向上から、十分に精度管理がなされている施設であれば、測定値の比較は可能です。健診の判定は総合的に行われるといっても、根拠になる測定値が正確でないと診断を誤ることになります。
受診される方の中に臨床的な症状があるにもかかわらず、健診まで我慢される方がいらっしゃいます。健診は、症状を伴わない異常のない人を対象としています。健診検査項目も限られていますので、必ずしも診断がつくわけではありません。症状がある場合は、健診、ドックでなく患者として医療機関に受診することをおすすめします。一概にはいえませんが、手遅れになる場合もあります。
●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。