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「尿沈渣」の検査について[ラボ NO.408(2013.1.発行)より]

尿沈渣とはどんな検査ですか?

尿沈渣とはどんな検査ですか?

10mlほどの尿を遠心して、 沈殿した細胞、 円柱、結晶などを顕微鏡で観察する検査です(イラスト図)。

尿検査では、尿試験紙検査がまず行われますが、尿沈渣を加えることにどのような意義があるのでしょうか?

尿検査では、尿試験紙検査がまず行われますが、尿沈渣を加えることにどのような意義があるのでしょうか?

最近の尿試験紙は項目が多く情報がたくさん得られますが、あくまでも化学反応によっているため、実際のものを観察する尿沈渣に比べると信頼性が低い場合があります。例えば、試験紙で潜血反応が陽性であっても、血尿とは限りません。つまり、赤血球内のヘモグロビンや筋肉内のミオグロビンによって陽性になるので、体内で溶血が起こる病気や、筋肉が壊れる病気でも潜血反応は陽性になります。腎臓や膀胱からの出血、すなわち血尿の確定診断には、尿沈渣で赤血球を確認することが必要です。また、膀胱炎では、試験紙法での白血球反応や亜硝酸塩反応が陽性になりますが、尿沈渣で白血球と細菌を確認することで、確定診断となります。

尿沈渣で血尿がどこに由来するかわかりますか?

尿沈渣で血尿がどこに由来するかわかりますか?

赤血球をよく観察すると、膀胱などの下位の尿路から由来するものは形が整っていますし、腎臓から由来するものは赤血球が変形しているので、ある程度区別することができます。腎臓由来の血尿は、赤血球の形だけでなく、タンパク尿を伴うことでも推測されますが、赤血球円柱があると確実になります。

円柱とはどんなものですか?

円柱とはどんなものですか?

円柱は英語でcast(鋳型)といいます。 腎臓の中の尿が通る管の内腔を鋳型にして、タンパク質が固まったものが円柱です。タンパク濃度の濃い尿が出る場合や、脱水などで水分が多く再吸収されて、タンパク質が溶けていることができなくなったときに形成されます。多くの腎臓病や、健康な人でも激しく汗をかいたときに出現します。また、赤血球を含む円柱を赤血球円柱といいますが、これは円柱ができる場所に、既に赤血球があったことを意味します。つまり、赤血球円柱は腎臓病で見られますが、膀胱で出血する疾患では見られないということです。

尿沈渣で膀胱癌を見つけることができますか?

尿沈渣で膀胱癌を見つけることができますか?

非常に稀ですが、尿沈渣を観察していると、偶然癌細胞を見つけることがあります。意図的に癌を疑って検査する場合には、癌細胞発見の確率を上げるために採取する尿の量を増やして標本を作ることがあります。細胞の染色と、判定は専門の検査技師にまかせるべきです。ただし、この方法では限界があるため、膀胱鏡などの画像診断検査が必要です。

どんな注意が必要な検査でしょうか?

どんな注意が必要な検査でしょうか?

尿のサンプルとして、朝の濃い尿が適切とされていますが、長い間、膀胱内にたまっていたことにより、細胞が変形したり円柱が壊れたりする変化を考えなければいけません。また結晶成分は、尿が酸性かアルカリ性かによって、みられる種類が異なります。尿を長時間放置することにより、細菌が増えてしまうことがあります。採取した尿は、速やかに検査することが重要です。