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検査値異常の判断法

運動と検査値について[ラボ NO.446(2016.3.発行)より]

剣道を行っています。
練習後の尿検査でヘモグロビン陽性と言われました。

剣道を行っています。練習後の尿検査でヘモグロビン陽性と言われました。

剣道や体がぶつかり合う格闘技では、打撲した部分の血管の中で赤血球が壊れています。青あざの有無は関係ありません。通常、古くなった赤血球中のヘモグロビンは、脾臓で分解されます。しかし、打撲などで異常に赤血球が壊れると、ヘモグロビンは腎臓でろ過されてしまい、その一部は尿中に流れて行ってしまいます。このため、打撲後の尿検査でヘモグロビン陽性となるのです。
この現象は、とくに女性アスリートにしばしば起きる運動性貧血の原因ともなっています。女子バレーボール、バスケットボール、マラソンでは、足の裏で打撲と同じ現象が起きるからです。

子どもの運動会の翌日、健康診断の血液検査で
クレアチンキナーゼ(CK)が異常高値と言われました。

子どもの運動会の翌日、健康診断の血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)が異常高値と言われました。

クレアチンキナーゼ(CK)は、心筋梗塞、脳梗塞あるいは筋炎の際に異常高値を示す項目です。CKは、心筋、骨格筋などの筋肉や脳の神経細胞に多く含まれているため、それらが破壊された際に血液中に出現します。
普段運動をしていない人が久しぶりに無理に激しく筋肉を動かすと、筋肉の一部が壊れ、CKが異常高値となることがあります。本人が運動したと気がつかなくても、高層ビルの30階から階段を降りるなど、慣れないことをした際に高値を示すことがあります。また、筋肉注射を受けたあとにもCKが異常高値となります。

動直後の血液の脂質の検査を行ったところ、
遊離脂肪酸(FFA)が高値と言われました。

動直後の血液の脂質の検査を行ったところ、遊離脂肪酸(FFA)が高値と言われました。

運動をすると、体内でアドレナリンが優勢となります。アドレナリンは、心拍数を増し、骨格筋への血流を増やすなどして、身体が運動に適する状態にします。また、アドレナリンは運動にプラスとなるように、体内の脂肪組織に蓄積された中性脂肪を遊離脂肪酸(FFA)とグリセロールに分解させ、FFAの血液中の濃度を上げます。運動で使う筋肉はそのFFAを優先的に利用します。このため、運動時には、FFAが高値となりますが、健康であれば、一時的に高値となったFFAも、筋肉運動を終えたあとは徐々に肝臓に取り込まれ、脂肪組織に蓄積されることになります。
このように、脂肪組織に蓄積した中性脂肪は、アドレナリンが分泌されたときにのみ消費可能な形になるので、脂肪の燃焼のためには、心拍数の上がるような運動が必要ということになります。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。