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新規保険収載検査

区分 :E3(新項目)N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製 p16 タンパク 区分 :E2(既存項目・変更あり)N005-4 ミスマッチ修復タンパク免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製(留意事項(1)エの追加) D008 内分泌学的検査 区分:E1 25 Ⅰ型コラーゲン架橋 N- テロペプチド(NTX)

令和7年1月1日より保険適用 区分 : E3(新項目)
N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製 p16 タンパク
1. 区分 : E3(新項目)
N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製 p16 タンパク
保険点数 720 点(本区分の「1」エストロジェンレセプターを準用して算定する)
製品名 ベンタナ OptiView CINtec p16(E6H4)
製造販売元 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
概 要 2024 年 11 月、本品は体外診断用医薬品として薬事承認を受け、2025 年 1 月から新規保険適用となった。その使用目的は p16 タンパクの検出による子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の診断補助である。これにより、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)が疑われる患者で、病理医が HE 染色にて腫瘍性病変の鑑別が困難な時に実施した場合、720 点の算定が可能となった。
使用目的 組織中の p16 タンパク(HER2)の検出(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の診断補助)
測定方法 免疫組織化学染色法(HQ リンカーを用いる方法):IHC 法
検 体 ホルマリン固定パラフィン包埋切片
測定原理 本品は、リンカー HQ(ブリッジ試薬)を使用した免疫組織化学染色法により、組織中の p16 タンパクを検出する。
スライド標本上の抗原に一次抗体を反応させると、検体に存在する対象抗原と結合する。次にヒドロキシキノキサリンで標識したリンカー HQ 及びペルオキシダーゼで標識したマルチマー HRP を反応させると、検体スライド上に、対象抗原-一次抗体-リンカー HQ -マルチマー -HRP の結合物が形成される。この結合物に DAB 試薬、H2O2 試薬及び COPPER 試薬を添加すると、酵素反応により、検体スライド上の抗原が茶褐色に染色される。染色された検体スライドに対し、鏡検を実施する。
判定基準

陽性:「Diffuse パターン(びまん性)」
子宮頸部扁平上皮の基底層から傍基底細胞層へ連続したびまん性染色を認める(中層又は中~表層の細胞染色有無に関わらず)

陰性:「Focal パターン(限局性)」または「染色なし」
細胞単体又は小細胞集塊への染色;すなわち非連続的な染色で基底細胞及び傍基底細胞に染色を認めない
または
染色性が全く認められない

臨床的意義 1,100 症例の FFPE 子宮頸部組織を対象に、一般病理医(70 名)が HE 染色のみにより判定した結果と HE 染色と本品を併用した判定結果を、それぞれ専門病理医パネル(中央病理)の判定結果と比較したところ、本品の併用によるCIN 診断精度の改善が認められました。
≧ CIN2 を陽性した場合の一致率の向上:全体一致率 2.1%(89.9 → 92.0%)、陽性一致率 6.3%(85.7 → 92.0%)
≧ CIN3 を陽性した場合の一致率の向上:全体一致率 0.1%(94.7 → 94.8%)、陽性一致率 7.8%(68.1 → 75.9%)
留意事項 (下線部分の追加)
第 2 章 第 13 部 第 1 節 N 002
(11)p16 タンパクは、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)が疑われる患者であって、HE 染色で腫瘍性病変の鑑別が困難なものに対して HQ リンカーを用いて免疫染色病理標本作製を行った場合に、本区分の「1」エストロジェンレセプターを準用して算定する。と。
参考文献

1)ベンタナ OptiView CINtec p16(E6H4)電子添文 .

2)子宮頸癌取扱い規約 病理編 第 5 版 . 日本産科婦人科学会・日本病理学会編 . 2022 年 12 月 .

3)Stoler M, et al. Tumor of the Uterine Cervix. In Kurman RJ, et al. WHO Classification of Tumours of Female Reproductive Organs. 4th edition. IARC and WHO, 2014: 169-206.

製品関連URL https://diagnostics.roche.com/jp/ja/products/tests/cintec-histology.html
文責 : ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社/監修:日本臨床検査医学会保険診療委員会
令和7年2月1日より適用拡大 区分:E2(既存項目・変更あり)
N005-4 ミスマッチ修復タンパク免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製
(留意事項(1)エの追加)
2. 区分:E2(既存項目・変更あり)
N005-4 ミスマッチ修復タンパク免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製
(留意事項(1)エの追加)
保険点数 2,700 点
製品名 ベンタナ OptiView MLH1(M1)
ベンタナ OptiView PMS2(A16-4)
ベンタナ OptiView MSH2(G219-1129)
ベンタナ OptiView MSH6(SP93)
製造販売元 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
概 要 2024 年 11 月、ミスマッチ修復(MMR)タンパクを検出する免疫組織化学染色(IHC)4 項目(以下、MMR IHC 検査)は、化学療法歴のない進行・再発の子宮体癌患者への「オラパリブ(製品名:リムパーザ ®)」(アストラゼネカ株式会社)の投与判定するためコンパニオン診断品として適応が拡大された。MMR IHC 検査によりミスマッチ修復機能 正常(pMMR) が確認された場合にオラパリブが適応となる。本適応追加は 2025 年 2 月から保険適用となった。
使用目的 (下線部分:今回追加された使用目的)
・ベンタナ OptiView MLH1(M1):がん組織中の MLH1 タンパクの検出

ア:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)の固形癌患者への適応を判定するための補助

イ:大腸癌におけるリンチ症候群の診断の補助

ウ:大腸癌における化学療法の選択の補助(※)

エ:オラパリブの子宮体癌患者への適応を判定するための補助

・ベンタナ OptiView PMS2(A16-4):がん組織中の PMS2 タンパクの検出

ア:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)の固形癌患者への適応を判定するための補助

イ:大腸癌におけるリンチ症候群の診断の補助

ウ:大腸癌における化学療法の選択の補助(※)

エ:オラパリブの子宮体癌患者への適応を判定するための補助

・ベンタナ OptiView MSH2(G219-1129):がん組織中の MSH2 タンパクの検出

ア:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)の固形癌患者への適応を判定するための補助

イ:大腸癌におけるリンチ症候群の診断の補助

ウ:大腸癌における化学療法の選択の補助(※)

エ:オラパリブの子宮体癌患者への適応を判定するための補助

・ベンタナ OptiView MSH6(SP93):がん組織中の MSH6 タンパクの検出

ア:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)の固形癌患者への適応を判定するための補助

イ:大腸癌におけるリンチ症候群の診断の補助

ウ:大腸癌における化学療法の選択の補助(※)

エ:オラパリブの子宮体癌患者への適応を判定するための補助

測定方法 免疫組織化学染色法(免疫抗体法):IHC 法
検 体 ホルマリン固定パラフィン包埋切片
測定原理 本品は、リンカー HQ(ブリッジ試薬)を使用した免疫組織化学染色法により、それぞれ組織中の MLH1, PMS2, MSH2, MSH6 タンパクを検出する。スライド標本上の抗原に一次抗体を反応させると、検体に存在する対象抗原と結合する。次にヒドロキシキノキサリンで標識したリンカー HQ 及びペルオキシダーゼで標識したマルチマー HRP を反応させると、検体スライド上に、対象抗原-一次抗体-リンカー HQ -マルチマー -HRP の結合物が形成される。
この結合物に DAB 試薬、H2O2 試薬及び COPPER 試薬を添加すると、酵素反応により、検体スライド上の抗原が茶褐色に染色される。染色された検体スライドに対し、鏡検を実施する。
判定基準 従来の判定方法から変更なし
ミスマッチ修復機能 正常 (pMMR)
MLH1、PMS2、MSH2 及び MSH6 タンパク発現が全て保持されている
ミスマッチ修復機能 欠損 (dMMR)
MLH1、PMS2、MSH2 及び MSH6 タンパク発現が一つ以上消失している
臨床的意義 国際共同第 III 相試験(DUO-E 試験)
化学療法歴のない進行・再発の子宮体癌患者 718 例(①オラパリブ / デュルバルマブ / 化学療法群 239 例、②デュルバルマブ / 化学療法群 238 例、③化学療法群 241 例、うち、日本人はそれぞれ① 26 例、② 30 例、③ 32 例)を対象として、上記①及び②の有効性及び安全性を、③と比較する無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同第 III 相試験を実施した。
主要評価項目である治験担当医師判定による無増悪生存期間において、オラパリブ / デュルバルマブ / 化学療法群及びデュルバルマブ / 化学療法群は、化学療法群に対して統計学的に有意な延長を示した。

<pMMR の患者集団における無増悪生存期間>
①オラパリブ / デュルバルマブ / 化学療法群
中央値:15.0 ヵ月、ハザード比:0.57(③との比較)、0.76(②との比較)
②デュルバルマブ / 化学療法群
中央値:9.9 ヵ月、ハザード比:0.77(③との比較)
③化学療法群
中央値:9.7 ヵ月
<dMMR の患者集団における無増悪生存期間>
①オラパリブ / デュルバルマブ / 化学療法群
中央値:31.8 ヵ月、ハザード比:0.41(③との比較)、0.97(②との比較)
②デュルバルマブ / 化学療法群
中央値:未達、ハザード比:0.42(③との比較)
化学療法群
中央値:7.0 ヵ月
留意事項 (下線部分の追加)
第 2 章 第 13 部 第 1 節 N005-4
(1)ミスマッチ修復タンパク免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製は、以下のいずれかを目的として、免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製を行った場合に、患者 1 人につき 1 回に限り算定する。
ア 固形癌における抗 PD-1 抗体抗悪性腫瘍剤の適応判定の補助
イ 大腸癌におけるリンチ症候群の診断の補助
ウ 大腸癌における抗悪性腫瘍剤による治療法の選択の補助
子宮体癌における PARP 阻害剤の適応判定の補助
参考文献

1)ベンタナ OptiView MLH1(M1)電子添文

2)ベンタナ OptiView PMS2(A16-4)電子添文

3)ベンタナ OptiView MSH2(G219-1129)電子添文

4)ベンタナ OptiView MSH6(SP93)電子添文

5)Westin SN, et al. Durvalumab plus carboplatin/paclitaxel followed by maintenance durvalumab with or without olaparib as first-line treatment for advanced endometrial cancer: The phase III DUO-E trial. Journal of Clinical Oncology. 2024; 42(3): 283-99.

製品関連URL なし
文責:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社/監修:日本臨床検査医学会保険診療委員会
令和6年10月17日より保険適用 D008 内分泌学的検査 区分:E1
25 Ⅰ型コラーゲン架橋 N- テロペプチド(NTX)
3. D008 内分泌学的検査 区分:E1
25 Ⅰ型コラーゲン架橋 N- テロペプチド(NTX)
保険点数 156 点
製品名 セビア NTX 血清
製造販売元 SEBIA JAPAN 株式会社
使用目的 血清中の I 型コラーゲン架橋 N- テロペプチド(NTX)の測定
測定方法 競合阻害酵素結合免疫吸着測定法(ELISA 法)
検 体 血清
有 用 性 本品は、骨のⅠ型コラーゲンの分解産物であり骨吸収の状態を反映するⅠ型コラーゲン架橋 N テロペプチド(NTX)を定量する試薬です。NTX は骨吸収状態のマーカーとなるだけでなく、乳がん、肺がん、前立腺がんの骨転移のマーカーとしても有用性が認められています。
測定原理 本品は、ヒト血清中の NTX を、競合阻害酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定する試薬です。合成 NTX 抗原(ストレプトアビジン - ビオチン化 NTX 複合体)が固相された抗原結合プレートのウェルに、標準溶液、コントロール血清及び検体を各ウェルに加え、さらに酵素標識抗体溶液を加えます。検体中の NTX はプレートウェル中の合成NTX 抗原と競合し、検体中の NTX の量に反比例して、固相された合成 NTX 抗原に結合する酵素標識抗体の量は減 少します。洗浄により、検体中の NTX に結合した酵素標識抗体と未反応の酵素標識抗体を取り除きます。ウェルに発色試液を添加すると、プレートに固相された合成 NTX 抗原に結合した酵素標識抗体の量に応じて発色します。吸光度をプレートリーダーで測定し、同時に測定した標準溶液の吸光度より検量線を作成します。作成した検量線を用いて、検体の NTX の濃度を算出します。
測定値は、1 リットルあたりのナノモル骨コラーゲン当量(nmol/L Bone Collagen Equivalents : nM BCE)として報告されます。
説 明 骨粗鬆症は骨の量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。高齢化に伴って増加傾向にあり、大規模コホート研究 ROAD Study の報告では、腰椎 L2-4 の測定で診断した場合は男性で 3.4%、女性で 19.2% でした。また、骨粗鬆症は骨折のリスクを上げるだけでなく、サルコペニア、フレイルの発生リスクを上昇させることが分かっています。高齢者の要介護リスクを低減し、健康な老後を目指すうえで、骨粗鬆症にならない、あるいは早期治療により骨粗鬆症を治療する取り組みは国民の健康寿命において非常に重要といえます。
NTX は破骨細胞中のカテプシン K により、Ⅰ型コラーゲンが分解された代謝産物であり、骨代謝マーカーのうち、骨吸収マーカーです。骨密度とは独立した骨折の予測因子で、骨粗鬆症の診断後の薬物療法の必要性や薬剤選択に役立つとされ、薬剤治療効果の判定にも用いられます。しかし、従来の承認品として検査に使用されていた「オステオマーク NTx 血清」は、令和 5 年 7 月 31 日以降終売されたため血清中の NTX の検査が中止され、測定ができない状態となっておりました。「セビア NTX 血清」は、「オステオマーク NTx 血清」と同じ海外製造元の試薬で、令和 6 年 9 月 10 日承認を取得し再度臨床の場で使用できるようになりました。
留意事項 (12)「25」の I 型コラーゲン架橋 N -テロペプチド(NTX)及び「39」のデオキシピリジノリン(DPD)(尿)は、原発性副甲状腺機能亢進症の手術適応の決定、副甲状腺機能亢進症手術後の治療効果判定又は骨粗鬆症の薬剤治療方針の選択に際して実施された場合に算定する。なお、骨粗鬆症の薬剤治療方針の選択時に 1 回、その後 6 ヶ月以内の薬剤効果判定時に 1 回に限り、また薬剤治療方針を変更したときは変更後 6 ヶ月以内に 1 回に限り算定できる。

(13)「25」の I 型コラーゲン架橋 N -テロペプチド(NTX)、「26」のオステオカルシン(OC)又は「39」のデオキシピリジノリン(DPD)( 尿 ) を併せて実施した場合は、いずれか 1 つのみ算定する。

(14)「25」の酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP-5b)は、代謝性骨疾患及び骨転移(代謝性骨疾患や骨折の併発がない肺癌、乳癌、前立腺癌に限る)の診断補助として実施した場合に 1 回、その後 6 ヶ月以内の治療経過観察時の補助的指標として実施した場合に 1 回に限り算定できる。また治療方針を変更した際には変更後 6 ヶ月以内に 1 回に限り算定できる。本検査と「25」の I 型コラーゲン架橋 N―テロペプチド(NTX)、「26」のオステオカルシン(OC)又は「39」のデオキシピリジノリン(DPD)( 尿 ) を併せて実施した場合は、いずれか一つのみ算定する。なお、乳癌、肺癌又は前立腺癌であると既に確定診断された患者について骨転移の診断のために当該検査を行い、当該検査に基づいて計画的な治療管理を行った場合は、「B001」特定疾患治療管理料の「3」悪性腫瘍特異物質治療管理料の「ロ」を算定する。
参考文献

1)日本骨粗鬆学会 骨代謝マーカー検討委員会.骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイド 2018 年版(一般社団法人 日本骨粗鬆症学会).

2)Shetty S, Kapoor N, Bondu JD, Thomas N, Paul TV. Bone turnover markers: Emerging tool in the management of osteoporosis. Indian JEndocrinol Metab. 2016 Nov-Dec; 20(6): 846-52.

3)Greenblatt MB, Tsai JN, Wein MN. Bone Turnover Markers in the Diagnosis and Monitoring of Metabolic Bone Disease. Clin Chem.2017 Feb; 63(2): 464-74.

4)Li L, Shen X, Liang Y, Li B, Si Y, Ma R. N-telopeptide as a potential diagnostic and prognostic marker for bone metastasis in human cancers: A meta-analysis. Heliyon. 2023 May 1; 9(5):e 15980.

5)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会編.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015 年版(日本骨粗鬆学会、日本骨代謝学会、日本骨粗鬆症財団)

6)吉村典子 . 骨粗鬆症の疫学―地域住民コホート ROAD スタディより Jpn J Rehabil Med. 2019; 56: 344-8.

製品関連URL なし
文責:SEBIA JAPAN 株式会社/監修:日本臨床検査医学会保険診療委員会

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