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生体には、バランスがとれた一定の状態を保とうとする働きがあります。そのため、多くの検査値は、ある一定の範囲の中で安定した値を示します。しかし、一部の検査項目では、食事などの外的刺激が加わると、それにともなう生体の変化を反映して、検査値が高くなったり、逆に低くなったりすることがあるのです。
中性脂肪(TG)、血糖、インスリン、アルカリホスファターゼ(ALP)などで、食後に値が上昇します。TGや血糖は、食事に含まれる脂肪や糖が、小腸から吸収されて血中に移動することによって上昇します。インスリンは、血糖を低下させるホルモンなので、食後に血糖が上昇すると、血糖を元のレベルに戻すために膵臓から分泌されます。ALPは、胆石や骨の病気で上昇する酵素です。血液型がB型またはO型の分泌型注)の人で、食後に値が上昇します。これは、小腸から血中に分泌されるALPが上昇するためで、病的なものではありません。上昇の程度には個人差が大きく、食事の脂肪分が多い場合に、よりはっきりとするようです。このような条件に当てはまる場合は、空腹時に再検査をすることをおすすめします。
注)ABO式血液型とは独立した血液型で、日本人のおよそ3/4が分泌型です。
遊離脂肪酸(NEFA)は、 食後に値が低下します。脂肪組織に蓄えられているTGは、 空腹時に分解されてエネルギー源として使われます。 食事をするとTGの分解が止まり、食事から吸収された糖分をエネルギー源に利用します。NEFAは、TGが分解されるとできる物質です。だから、NEFAは空腹時で高く、 食事をとると血中濃度が減少します。
生体には、ホルモンなどにより調節されている日内リズムがあります。その影響を受ける検査項目は、採血時間により検査値が大きく変動します。血清鉄(Fe)は午前中に高く午後に低い日内変動があり、鉄分を多い食事をしても、午後には早朝の空腹時より値が低くなるのです。コルチゾールやアルドステロンなどのホルモンも、朝に検査値が高く、午後から夜にかけて低下します。これらの項目の変動幅が大きいのに対し、昼に高く夜に低い尿酸の変動幅は1.0 mg/dL未満であり、通常は採血時間を気にする必要はありません。
●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。