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見逃せない検査異常

甲状腺の検査(TSH、FT3、FT4)[ラボ NO.544(2024.5.発行)より]

甲状腺はどのような働きをしていますか?

甲状腺は、頸部の前面で喉ぼとけのやや下に位置する小さな臓器です。前から見ると蝶のような形をしており、大きさは15 ~20g程度です(図参照)。食事中のヨウ素を材料とし、全身の代謝を調節する甲状腺ホルモン(T4とT3)をつくり出します。脳の視床下部と下垂体がそれぞれ甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を分泌し、T3と4の産生を調節しています。
甲状腺ホルモンは、体温・脈拍・食欲・体重・便通など、全身のさまざまな代謝機能や循環機能を整える役割を持ち、胎児期や小児期の身体発育のほか、精神や知能の発達にも重要な役割を担っています。

甲状腺の病気にはどんなものがありますか?

甲状腺ホルモンが過剰な場合を甲状腺機能亢進症、逆に不足する場合を甲状腺機能低下症と呼びます。前者では動悸、体重減少、発汗過多、下痢などを認めます。後者では逆に体重増加や浮腫、寒がり、無気力、便秘などを認めます(表参照)。
機能亢進症の原因は、自己免疫異常(バセドウ病)が多く、ほかに破壊性甲状腺中毒症(無痛性甲状腺炎)、ウイルス感 染(亜急性甲状腺炎)、機能性甲状腺腫(プランマー病:甲状 腺ホルモン産生腫瘍)などがあります。機能低下症の原因は、橋本病(慢性甲状腺炎)が代表的であり、中年以降の女性に多い疾患です。そのほか、ヨード類(昆布、ひじき)の 慢性的な過剰摂取の場合や、甲状腺の手術後や放射線治療後に機能低下症をきたすことがあります。

甲状腺の検査はどんなものがありますか?

最初に甲状腺ホルモン(T4とT3)の増減を調べます。T4とT3 は血液中で蛋白と結合し、一部が遊離型として存在 しており、それらの遊離型甲状腺ホルモン(freeT4, freeT3)が生理活性を示します。
そのため、臨床検査では free T4 と free T3 を測定します。異常がある場合は、超音波検査で甲状腺の内部を調べ たり、甲状腺の自己抗体検査(甲状腺受容体抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗サイログロブリン抗体など)を追加します。
甲状腺以外の原因部位を調べるために脳下垂体から分泌されるTSH も測定します。TSHとfreeT4・freeT3の増減の組み合わせにより、機能亢進か低下か、原発性(甲状腺)か続発性(中枢性など)かを判断します。TRHは、一般検査としては測定しません。尚、甲状腺の病気は多彩な症状を示しますが、健康診断などでの肝機能値(AST・ALT・ALP)や血中コレステロール値(TC・LDL-C)の異常をきっかけに見つかることがあります。健康診断での肝機能やコレステロールの異常にも注意しましょう。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。