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見逃せない検査異常

脂質検査(TC、TG、HDL、LDL)[ラボ NO.543(2024.4.発行)より]

代表的な血清脂質検査の概要

総コレステロール(TC)、トリグリセライド(TG)、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール(HDL-C)と低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール(LDL-C)は血清脂質の代表的な臨床検査項目です。
脂質検査の採血は原則として10時間以上絶食後の空腹時に行うが、臨床におけるスクリーニング採血や随時TG値を確認したい場合は随時採血も可能です。ただし、食後検体ではカイロミクロンが増加してTGが高くなり、LDL-CをFriedewald式(TC-HDL-C -TG/5)で求められません。一方、TG濃度が400mg/dL未満の空腹時検体の場合は、Friedewald式を用いてLDL-Cは算出できます。また、採血前日夜の飲酒はTG上昇を遷延させることがありますので注意が必要です。TC、LDL-C、HDL-C は日中わずかに低下しますが、低下率は早朝空腹時から平均5%であり、これら3項目に対する採血時間の影響は少ないとされています。なお、TGが 1,000 mg/dL未満なら、直接法によるLDL-CやHDL-C に影響はないです。

各血清脂質検査について

1)TC
TC は遊離型コレステロール(FC)と脂肪酸が結合したエステル型コレステロールの和です。TCはコレステロールエステラーゼによりFCだけにして、コレステロールオキシダーゼが反応して測定される酸化酵素法によって定量される。かつて TC は動脈硬化のリスク因子あるいは脂質異常症の診断として測定されていましたが、本来、肝機能や栄養状態の指標(例えばCONUT指数)として評価されます。
2)TG
TG の濃度は食事の影響を受けやすく、食後TGは上昇する。高TG血症を含め脂質異常症の診断は空腹時採血で行われてきましたが、食後のTG高値すなわち食後高脂血症が動脈硬化性心血管(ASCVD)リスクとして注目されています。空腹時のTGは150mg/dL以上、随時のTGは175mg/dL以上が脂質異常症の診断基準とされています。
3)HDL-C
HDL-Cは、現在では直接法で測定されます。直接法には原理の異なる複数の試薬がありますが、いずれも空腹時、随時のどちらの検体でも使用できます。HDL組成が正常と著しく異なる場合(例えばHDL-C<25mg/dL、≧120mg/dL、胆汁うっ滞性肝障害など)、試薬間差が大きいのでアポリポ蛋白など他の検査を併用します。なおHDL-C<25mg/dLのなかには指定難病の原発性低HDL-C血症の可能性があるので留意してください。TCからHDL-Cを引いた値はnon-HDL-Cとして評価されます。動脈硬化惹起性リポ蛋白であるLDL(狭義)、IDL、レムナントリポ蛋白などのコレステロールが含まれ、アポリポ蛋白Bと良い相関を示します。カイロミクロンやVLDLのコレステロールも含まれるため、TG≧600 mg/dLではその影響が無視できなくなりnon-HDL-Cの信頼性が担保できないので留意してください。
4)LDL-C
LDL-Cは通常 Friedewald式による算出値または直接法による測定値で評価されます。前者は食後(随時)の検体や TG 濃度が400 mg/dL以上の検体では使用されません。後者には原理の異なる複数の試薬がありますが、基本的には食事による影響はなく、採血は随時でかまいません。TG濃度が400mg/dL以上の検体でも直接法によるLDL-C測定は可能です。

脂質異常症の診断

脂質異常症は表に示す診断基準に基づき診断されます。

* 基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする。空腹時であることが確認できない場合を「随時」とする。
** スクリーニングで境界域高LDL-C血症、境界域高non-HDL-C血症を示した場合は、高リスク病態がないか検討し、治療の必要性を考慮する。
・ LDL-CはFriedewald式(TC-HDL-C-TG/5)で計算する(ただし空腹時採血の場合のみ)。または直接法で求める。
・ TG が400mg/dL 以上や随時採血の場合はnon-HDL-C(=TC-HDL-C)かLDL-C直接法を使用する。ただしスクリーニングでnon-HDL-Cを用いるときは、高 TG 血症を伴わない場合はLDL-Cとの差が+30 mg/dLより小さくなる可能性を念頭においてリスクを評価する。
・TG の基準値は空腹時採血と随時採血により異なる。
・HDL-C は単独では薬物介入の対象とはならない。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。