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見逃せない検査異常

凝固検査(PT、APTT)[ラボ NO.534(2023.7.発行)より]

止血の仕組みは?

血管が破綻し出血が起こると、まず破綻部位の血管壁に血液中の血小板が集まってきて、粘着・凝集し血栓を作ります。これを血小板血栓または 1 次止血栓といいます。この血小板血栓は脆く、これだけでは止血は不十分なので、次いで血液凝固因子と呼ばれる物質が活性化してフィブリンを形成し、これが血小板血栓にからまって強固な 2 次止血栓(フィブリン血栓)を作ります。これで止血が完了します(図)
このような止血の仕組みに何らかの異常が生じると、出血しやすい、あるいは出血するとなかなか止まりにく いという症状が出現します。これを出血傾向と呼んでいます。

凝固検査(PT、APTT)とは何?

出血傾向が出現した場合には、主に血小板と血液凝固因子の2つを検査します。このうち血液凝固因子を調べる検査に、プロトロンビン時間(PT:Prothrombin Time)と活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT:Activated PartialThromboplastin Time)の2つがあります。凝固因子の欠乏や異常があると、血液凝固過程が障害され、PT、APTT が延長します。血液凝固因子は全部で 12 あり、ローマ数字で Iから XIII までの番号がつけられています(VI は欠番)。PT は、第 VII、X、V、II、I 因子のいずれかが欠乏したり機能に障害があると延長し、一方 APTT は、第 XII、XI、IX、VIII、X、V、II、I 因子のいずれかの欠乏や機能の異常で延長します。2 つ の検査は、X、V、II、I 因子については共通していますので、例えば PT が延長し APTT が基準範囲内の場合は、第 VII 因子の異常が考えられます。逆に PT が基準範囲内で APTT が延長している場合には、第 XII、XI、IX、VIII 因子のいずれかの異常が考えられます。
凝固因子の異常で出血傾向を生じる代表的な疾患に血友病があります。血友病には血友病 A、血友病 B の2型があり、血友病 A は第 VIII 因子、血友病 B は第 IX 因子の遺伝子異常が原因です。いずれも PT には異常はありませんが、APTTの延長がみられます。

PT、APTTの基準範囲は?

基準範囲は、おおよそ PT は 10 ~ 13 秒、APTT は 25 ~ 40 秒です。通常 PT は秒数ではなく、健常者の PT に対 する比率(PT-INR:国際標準比)で表示します。PT-INR =患者検体 P T(秒)/健常検体 P T(秒)であり、基準値は約 0.85 ~ 1.15(ほぼ 1.0)です。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。