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新規保険収載検査

プロステートヘルスインデックス(phi)アクセス ハイブリテックp2PSA SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)抗原検出 イムノエース(R) SARS-CoV-2 II/キャピリア(R) SARSCoV- 2 II

令和 3年 11月1日より保険適用 D009 腫瘍マーカー 区分:E3(新項目)
プロステートヘルスインデックス(phi)
プロステートヘルスインデックス(phi)
アクセス ハイブリテックp2PSA
保険点数 281点
製品名 アクセス ハイブリテックp2PSA
製造販売元 ベックマン・コールター株式会社
使用目的 血清中の[-2]proPSAの濃度測定(前立腺癌の診断の補助)
測定方法 化学発光酵素免疫法(CLEIA法)
検体 血清
有 用 性 プロステートヘルスインデックス(/phi/)はPSAとfree PSA(fPSA)および[-2]proPSAの測定値から算出され、前立腺癌診断補助のための指標であり、PSAグレーゾーンを示す患者から針生検対象者を絞り込むために有用な検査である。
特 徴 前立腺癌は、日本人の高齢化や食生活の欧米化に伴って増加傾向にある。前立腺癌の診断は、1次スクリーニング検査として血清PSAの測定が行われている。血清PSA値のカットオフ値は3.0 ng/mLもしくは4.0 ng/mLとされる場合が多く
1)、このカットオフ値を超えた場合に前立腺癌の可能性を考慮することとなる。前立腺癌の確定診断として生検があるが、特にPSAグレーゾーン iと呼ばれる血清PSA値が3.0 ng/mLあるいは4.0 ng/mLから10.0 ng/mLの領域は、生検を行った場合の陽性率が30%程度(PSA: 4.0~10.0 ng/mL)とされており2)、約70%が不必要な生検iiを受けることになる。
生検は合併症への対策が課題となっているため、前立腺癌の診断感度は維持しつつ不必要な生検を減らすことが重要である。血清PSAにより前立腺癌が疑われる場合、次に行う補助的な検査として %fPSA(F/T比)が使用されているが、その特異性は必ずしも良好な成績を示していないとのデータもみられ3)、さらなる有用な臨床的指標の探索が続けられてきた。このような状況の中、[-2]proPSAの測定方法が開発された。前立腺組織では、PSAに7つのアミノ酸が結合している、PSAの前駆体proPSAが、前立腺腺腔内に分泌される。proPSA は、human kallikrein 2 (hK2)により7つのアミノ酸が外されていき、活性型PSAへ変換される。癌組織ではhK2の濃度が低下しており、proPSAから活性型PSAへの変換が阻害される結果、proPSAが前立腺の腺腔内で蓄積する。特にproPSAの最終型である、2個のアミノ酸が結合している[-2]proPSAが癌組織中に貯留しやすく、さらに微小血管浸潤により貯留した[-2]proPSAが血中に漏出するため、前立腺癌において[-2]proPSA値が上昇する4) 。また、「アクセス ハイブリテックPSA(承認番号:20500AMY00118000)」および「アクセス ハイブリテックfreePSA(承認番号:20500AMY00118000)」と本品の測定値により算出するBeckman Coulter-Prostate Health Index(以下、phi )が前立腺癌の診断補助として有用であることが報告されている5)~8) 。本邦での臨床試験の結果、ROC曲線による検討では、phiのAUCは0.759であり、既存の診断マーカーPSA(0.572)・f PSA(0.567)・%f PSA(0.629)と比較して、より高い確率で前立腺癌を検出できるとの結果が得られた。また、%f PSAと比較してphi による診断では不必要な生検を8.1%(感度95%カットオフ値24.8)、17.8%(感度90%カットオフ値27.2)回避できることを確認した。以上より、本品による測定値から算出したphi を用いることにより、前立腺癌の占める割合が比較的低いPSAグレーゾーンの患者において、可能な限り前立腺癌を見落とすことなく、合併症のリスクのある不必要な生検を減らすことができると考えられる。
i : PSA測定値が年齢階層別PSAカットオフ値の下限3.0~10.0 ng/mLの患者。
ii : スクリーニング検査で陽性となったが、生検の結果陰性と判明した生検。
測定結果の判定
本品で測定された[-2]proPSA濃度と、別売の「アクセス ハイブリテックPSA」で測定されたPSA値および「アクセス ハイブリテックfreePSA」で測定されたfree PSA(f PSA)値から算出されたphiの値で行う。phi の演算式は以下のとおりである。
phi =([-2]proPSA/fPSA)×√PSA
留意事項 ア 診療及び他の検査(前立腺特異抗原(PSA)等)の結果から前立腺癌の患者であることが強く疑われる者であって、以下の(イ)、(ロ)又は(ハ)のいずれかに該当する者に対して、CLEIA法により、前立腺特異抗原(PSA)、遊離型PSA及び[-2]proPSAを測定し、プロステートヘルスインデックス(phi )を算出した場合に限り、区分番号「D009」腫瘍マーカーの「8」前立腺特異抗原(PSA)及び区分番号「D009」腫瘍マーカーの「15」遊離型PSA比(PSAF/T比)の所定点数を合算した点数を準用して算定する。
(イ)前立腺特異抗原(PSA)値が 4.0 ng/mL以上かつ10.0 ng/mL以下
(ロ)50歳以上65歳未満であって、前立腺特異抗原(PSA)値が3.0 ng/mL以上かつ10.0 ng/mL以下
(ハ)65歳以上70歳未満であって、前立腺特異抗原(PSA)値3.5 ng/mL以上かつ10.0 ng/mL以下
イ アに該当する患者に対して、前立腺癌の診断の確定又は転帰の決定までの間に、原則として1回を限度として算定す る。ただし、前立腺針生検法等により前立腺癌の確定診断がつかない場合においては、3月に1回に限り、3回を限度として算定できる。
ウ 「D009」腫瘍マーカーの「8」前立腺特異抗原(PSA)を併せて実施した場合には、主たるもののみ算定する。
エ 「D009」腫瘍マーカーの「15」遊離型PSA比(PSA F/T比)を併せて実施した場合には、主たるもののみ算定する。
オ 本検査を算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に、前立腺特異抗原(PSA)の測定年月日及び測定結果を記載すること。また、本検査を2回以上算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄にその必要性を記載すること。
参考文献 1)日本泌尿器科学会編. 前立腺癌検診ガイドライン2018年版. 大阪: 株式会社メディカルレビュー社: 2018. p1-216(オンライン),
入手先 https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/32_prostate_cancer_screening_2018.pdf
2)Ito K, Ohi M, Yamamoto T, et al. The diagnostic accuracy of the age-adjusted and prostate volume-adjusted biopsy method in male with prostate specific antigen levels of 4.1-10.0 ng/mL. Cancer 2002; 95(10): 2112-9.
3)大内秀紀, 三賢訓久, 三好康秀, その他. 前立腺癌診断におけるPSAのF/T比の検討. 日泌尿会誌 2000; 91(12): 695-9.
4)伊藤一人. proPSA測定とその意義. 臨床検査 2013; 57(12): 1448-56.
5)Stephan C, Vincendeau S, Houlgatte A, et al. Multicenter evaluation of [-2]prostate specific antigen and the prostate health index for detecting prostate cancer. Clin Chem 2013; 59(1): 306-14.
6)Stephan C, Jung K, Semjonow A, et al. Comparative assessment of urinary prostate cancer antigen 3 and TMPRSS2:ERG gene fusion with the serum [-2]proprostate-specific antigen-based prostate health index for detection of prostate cancer. Clin Chem 2013; 59(1): 280-8.
7)Lughezzani G, Lazzeri M, Haese A, et al. Multicenter European external validation of a prostate health index-based nomogram for predicting prostate cancer at extended biopsy. Eur Urol 2014; 66(5): 906-12.
8)Fossati N, Lazzeri M, Haese A, et al. Clinical performance of serum isoform [-2]proPSA(p2PSA), and its derivatives %p2PSA and the Prostate Health Index, in men age<60 years: results from a multicentric European Study. BJU Int 2015; 115(6): 913-20.
製品関連URL https://www.beckmancoulter.co.jp/
文責:ベックマン・コールター株式会社/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会
令和 3年 11月8日より保険適用 D012 感染症免疫学的検査 区分:E1 (既存)
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)抗原検出
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)抗原検出
イムノエース(R) SARS-CoV-2 II/キャピリア(R) SARSCoV-2 I
保険点数 600点
製品名 イムノエース(R) SARS-CoV-2 II /キャピリア(R) SARSCoV- 2 II
製造販売元 株式会社タウンズ
使用目的 鼻咽頭ぬぐい液または鼻腔ぬぐい液中のSARSCoV- 2 抗原の検出(SARS-CoV-2 感染の診断の補助)
有 用 性 本品は特別な装置類を必要とせず、簡単な操作により約15 分でSARS-CoV-2 抗原の検出が可能である。
測定方法 免疫クロマトグラフ法
検体 鼻咽頭ぬぐい液または鼻腔ぬぐい液
測定原理 イムノエース(R) SARS-CoV-2 II /キャピリア(R) SARSCoV- 2 II の測定原理はSARS-CoV-2 抗原を認識するモノクローナル抗体を用いた免疫クロマトグラフ法である。テストプレートの試料滴下部に試料を滴下すると白金- 金コロイド標識抗SARS-CoV-2 モノクローナル抗体(マウス)(以下、白金- 金コロイド標識抗SARSCoV- 2 抗体と記す)が溶解し、試料中のSARS-CoV-2 抗原と免疫複合体を形成する。この免疫複合体は展開部を毛細管現象により移動し、展開部に固定化された抗SARS-CoV-2 モノクローナル抗体(マウス)(以下、抗SARS-CoV-2 抗体と記す)に捕捉され、判定部[T]に白金- 金コロイドによる黒色のラインを形成する。本キットはこの黒色のラインを目視で確認し、試料中の SARS-CoV-2 抗原の存在の有無を判定する。
一方、試料中のSARS-CoV-2 抗原の存在の有無に拘らず、余剰の白金- 金コロイド標識抗SARS-CoV-2 抗体が展開部をさらに移動し、展開部に固定化された抗マウス免疫グロブリンポリクローナル抗体に捕捉され、判定部[C]に白金- 金コロイドによる黒色のラインを形成する。これは白金- 金コロイド標識抗SARSCoV- 2 抗体が正常に展開部を移動したことを示す。
説 明 国立感染症研究所の資料によると2019 年12 月、中華人民共和国湖北省武漢市において原因不明の肺炎患者の発生が確認され、2020 年1 月30 日、世界保健機関(WHO)により「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言され、世界的流行が惹き起こった。
WHO1)は新型のコロナウイルスが原因であることを発表し、2020 年2 月11 日に国際ウイルス分類委員会において、この新型のコロナウイルスはSARS-CoV-2 と命名された。
世界的な感染が続く状況下において、SARS-CoV-2 をより簡便で迅速に検出できる試薬が必要とされ、本品はPCR や遺伝子検査2)3)とは異なり、特別な装置類を全く必要とせず、簡単な操作で迅速なSARS-CoV-2 抗原の検出が可能であり、SARS-CoV-2 感染の診断の補助として有用であると考えている。
臨床性能試験の概要 (1) 国内臨床保存検体(輸送用培地を用いた鼻咽頭ぬぐい液)を用いたRT-PCR 法との相関性試験成績において、陽性一致率61.7%(141 例中87 例)、陰性一致率100%(50 例中50 例)、全体一致率71.7%(191 例中137 例)であった。保存検体のうち、RT-PCR 法陽性となった検体のウイルス量と本品の陽性一致率は、102 ~ 103コピー /テストで16.7%( 24例中4 例)、103 ~ 104 コピー/ テストで21.4%(28 例中6 例)、104 ~ 105 コピー/ テストで93.9%(33 例中31 例)、105 ~ 106 コピー/ テストで100%(46 例中46 例)であった。
(2) 国内臨床保存検体(輸送用培地を用いた鼻咽頭ぬぐい液)を用いた既承認医薬品との相関性試験成績において、陽性一致率96.2%(26 例中25 例)、陰性一致率96.9%(32 例中31 例)、全体一致率 96.6%(58 例中56 例)であった。なお、不一致例はともにRT-PCR 法で陽性であった。
(3) 本品の最小検出感度であるウイルス感染価1.03× 101 TCID50/ テストを基準とした陰性鼻腔ぬぐい液へのウイルス分離培養液添加試料を用いたRTPCR 法との相関性試験成績において、陽性一致率は1.03× 101 TCID50 / テストで100%(20 例中20例)、 2.05× 101 TCID50 / テストで100%(20 例中 20 例)、5.13× 101 TCID50 / テストで100%(20 例中20 例)、陰性一致率100%(60 例中60 例)、全体一致率100%(120 例中120 例)であった。
留意事項 1.本品付属の検体抽出液は、イムノエースFlu、イムノエース アデノ、イムノエースRSV Neo、イムノエースhMPV、イムノエースFlu/RSV、イムノエースSARS-CoV-2 で共通して使用可能である。
2.本品付属の検体抽出液で抽出した鼻咽頭ぬぐい液はイムノエースFlu、イムノエース アデノ、イムノエースRSV Neo、イムノエースhMPV、イムノエースFlu/RSV、イムノエースSARS-CoV-2 にも使用可能である。
3.本品付属の検体抽出液で抽出した鼻腔ぬぐい液はイムノエースFlu、イムノエースSARS-CoV-2 にも使用可能である。
4.本品の判定が陰性であっても、SARS-CoV-2 感染を否定するものではない。
5.検査に用いる検体については、厚生労働省より発表されている「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針4)」を参照すること。
6.診断は厚生労働省より発表されている医療機関・検査機関向けの最新情報を参照し、本製品による検査結果のみで行わず、臨床症状も含めて総合的に判断すること。
7.鼻腔ぬぐい液を検体とした場合、鼻咽頭ぬぐい液に比べ検出感度が低い傾向が認められているため、検体の採取に際して留意すること。
8.検体採取および取扱いについては、必要なバイオハザード対策を講じること。
参考文献 1)Naming the coronavirus disease(COVID-19) and the virus that causes it.
2)病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.9.1. 国立感染症研究所(オンライン),
入手先 https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/2019-nCoV20200319.pdf
3)新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検査法の運用についてのガイドライン 第3 版. 国立感染症研究所(オンライン),
入手先 https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/reference/COVID-19-PCR-test-practical_R3.pdf
4)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針 第4.1 版. 厚生労働省(オンライン),
入手先 https://www.mhlw.go.jp/content/000841541.pdf
製品関連URL https://www.tauns.co.jp/product/sars-cov-2-2/
文責:株式会社タウンズ/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会

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