SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)抗原検出 鳥特異的 IgG
SARS-CoV-2 (新型コロナウイルス)抗原検出
1)ビトロス(R) SARS-CoV-2抗原(オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス株式会社)
鳥特異的 IgG
2)イムノキャップ 特異的IgG 鳥(サーモフィッシャーダイアグノスティックス株式会社)
令和 3年 5月12日より保険適用 | D012 感染症免疫学的検査(22) 区分:E2 SARS-CoV-2 (新型コロナウイルス)抗原検出 |
SARS-CoV-2 (新型コロナウイルス)抗原検出 1)ビトロス(R) SARS-CoV-2抗原 |
保険点数 | 600点 |
製品名 | ビトロス(R) SARS-CoV-2抗原 |
製造販売元 | オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス株式会社 |
主な対象 | ・ COVID-19の患者であると疑われる者 ・ COVID-19の治療を目的として入院している者に対し、退院・就業可能かどうかの判断をする場合 |
主な測定目的 | 鼻咽頭ぬぐい液中のSARS-CoV-2抗原の測定(SARS-CoV-2感染の診断補助) |
測定方法 | 化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法) |
検 体 | 鼻咽頭ぬぐい液 |
有 用 性 | SARS-CoV-2感染診断には、国立感染所研究所が推奨するリアルタイム逆転写PCR法(RT-PCR法)や研究用試薬を用い検査が実施されている一方で、SARS-CoV-2抗原検査も登場しています。 本品は化学発光酵素免疫測定法を採用しており、SARS-CoV-2抗原の検出が可能な抗原検査(定量)です。 COVID-19の患者であると疑われる者やCOVID-19の治療を目的として入院している者に対し、退院・就業可能かどうかの判断をする際にSARS-CoV-2感染の診断補助として有用と考えられます。 本品は、ビトロス(R) XT7600を始めとするビトロス(R)分析機シリーズで測定可能であり、これらは、給水および排水設備が不要なため、様々な場所で運用が可能と考えられます。 国内臨床検体を用いた相関性においては、国内臨床検体(PBSに懸濁した鼻咽頭ぬぐい液)を用いたRT-PCR法1)との相関性を検討したところ、下記のとおりの一致率を示しました。 ・陰性一致率:100%(79/79) ・陽性一致率:75.5%(37/49) ・全体一致率:90.6%(116/128) なお、換算ウイルスコピー数別の本品の検出率は下記のとおりで、換算ウイルスコピー数100コピー以上において検出率100%でした2) 。 |
説 明 | SARS-CoV-2はベータコロナウイルスの1つであり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)およびそのパンデミックを引き起こすウイルスです。SARS-CoV-2は主として飛沫や接触により感染し、発熱、咳、息切れなどの急性呼吸器疾患の症状や兆候が出ますが、無症候の場合もあります3)4)。潜伏期間の中央値は5.1日と推定され、感染後12日以内に症状が出現すると予想されます5)。発症後および発症前、および無症候キャリアのすべてが感染源になる可能性があります6)。 ウイルス遺伝子を検出するRT-PCR法が現在のCOVID-19診断のゴールドスタンダードです。主に鼻咽頭ぬぐい液等の上気道検体を用いて検査が行われます4)。SARS-CoV-2は、複数のウイルス抗原を発現し、その中でもヌクレオカプシド抗原が最も豊富です7)。 免疫測定法ではヌクレオカプシド抗原を検出し、活動性感染の診断にも用いられます8)。 本品はSARS-CoV-2 RNAを検出するRT-PCR法と比較して感度は低いものの、ウイルス蛋白質を検出する本品の判定をもとに、臨床症状等も勘案した上で、「新型コロナウイルス感染症(COVID19)病原体検査の指針」(厚生労働省)に従って感染診断を行うことの臨床的有用性を期待できます。 |
留意事項 | (1)SARS-CoV-2(新型コロナウイルスをいう。以下同じ。)抗原検出は、当該検査キットが薬事承認された際の検体採取方法で採取された検体を用いて、SARS-CoV-2抗原の検出(COVID-19(新型コロナウイルス感染症をいう。以下同じ。)の診断又は診断の補助)を目的として薬事承認又は認証を得ているものにより、COVID-19の患者であることが疑われる者に対しCOVID-19の診断を目的として行った場合に限り、「25」マイコプラズマ抗原定性(免疫クロマト法)の所定点数4回分を合算した点数を準用して算定する。ただし、感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするための積極的疫学調査を目的として実施した場合は算定できない。 COVID-19の患者であることが疑われる者に対し、診断を目的として本検査を実施した場合は、診断の確定までの間に、上記のように合算した点数を1回に限り算定する。 ただし、発症後、本検査の結果が陰性であったものの、COVID-19以外の診断がつかない場合は、上記のように合算した点数をさらに1回に限り算定できる。なお、本検査が必要と判断した医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること9)。 (2)COVID-19の治療を目的として入院している者に対し、退院可能かどうかの判断を目的として化学発光酵素免疫測定法(定量)または電気化学発光免疫測定法(定量)によるSARS-CoV-2抗原検出を実施した場合は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」(令和2年6月25日健感発0625第5号)の「第1退院に関する基準」に基づいて実施した場合に限り、1回の検査につき上記のように合算した点数を算定する。なお、検査を実施した日時及びその結果を診療報酬明細書の摘要梱に記載すること9)。 |
注意事項 | ・検体の採取/輸送方法、保存方法、前処理は、国立感染症研究所の「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」、厚生労働省より公表されている「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針」および使用する採取用キットの添付文書を参照してください1)10)11)。 |
参考資料 | 1)国立感染症研究所.病原体検出マニュアル2019-nCoV Ver.2.9.1. 2)ビトロスSARS-CoV-2抗原試薬添付文書.令和3年4月作成第1版. 3)Modes of transmission of virus causing COVID-19: implications for IPC precaution recommendations, 入手先 https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/331601/WHO-2019-nCoV-Sci_Brief-Transmission_modes-2020.1-eng.pdf 4)IFCC Information Guide on COVID-19, 入手先 https://www.ifcc.org/resources-downloads/ifcc-information-guide-on-covid-19-introduction/ 5)Pascarella et al. COVID-19 diagnosis and management: a comprehensive review, J Intern Med. 2020. 6)Lai et al. Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2) and coronavirus disease-2019 (COVID-19):The epidemic and the challenges. International Journal of Antimicrobial Agents. 55:3; 2020. 7)Satarker and Nampoothiri. Structural Proteins in Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus-2,Archives of Med Res. 51:482, 2020. 8)Young et al. Clinical evaluation of BD VeritorTM SARS-CoV-2 point-of-care test performance compared to PCR-based testing and versus the SofiaR 2 SARS Antigen point-of-care test, medRxiv preprint. 9)厚生労働省. 検査料の点数の取扱いについて.保医発0318第1号(令和3年3月18日). 10)Interim Guidelines for Collecting, Handling, and Testing Clinical Specimens for COVID-19. 入手先 https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/lab/guidelines-clinical-specimens.html 11)厚生労働省.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針 第3.1版. |
製品関連URL | https://www.orthoclinicaldiagnostics.com/ja-jp/home/antigen_covid19 |
文責:オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス株式会/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会 |
令和 3年 6月1日より保険適用 | D012 感染症免疫学的検査 区分:E3(新項目) 鳥特異的 IgG |
鳥特異的 IgG 2)イムノキャップ 特異的IgG 鳥 |
保険点数 | 873点 |
製品名 | イムノキャップ 特異的IgG 鳥 |
製造販売元 | サーモフィッシャーダイアグノスティックス株式会社 |
主な測定対象 | 鳥関連過敏性肺炎が強く疑われる患者 |
主な測定目的 | 血清中又は血漿中の鳥抗原に対する特異的免疫グロブリンG(IgG)の測定(鳥関連過敏性肺炎の診断補助) |
測定方法 | 蛍光酵素免疫測定法(FEIA法) |
検 体 | 血清又は血漿 |
判定方法 | 本製品はハトおよびセキセイインコ抗原により各々特異的IgG抗体価を測定し、これら両者またはいずれかの測定値がカットオフ値(ハト;24mgA/L, セキセイインコ;8mgA/L)以上となった場合を陽性と判定し、両者がカットオフ値未満の場合を陰性と判定する。 |
有 用 性 | 本検査は、アレルギー性の間質性肺疾患である過敏性肺炎の原因に鳥抗原が関与する可能性を評価し、鳥関連過敏性肺炎の診断の一助となる。 |
説 明 | 過敏性肺炎は、環境中の特定の真菌、細菌、動物由来の蛋白、無機物などの抗原を繰り返し吸入することによって起こるIII型およびIV型アレルギー反応に基づく間質性肺炎の一病型である1)2)3)。臨床的に急性および慢性の2病型に大別されるが、急性では、せき、息切れ、発熱といった明確な症状が見られ、多くの場合は問診による発症環境の特定に基づいて原因抗原を除去することで改善する。慢性病型の場合には、少量の抗原に継続して暴露されることで明らかな症状を認めないままに進行し、労作時呼吸困難などの精査目的による画像検査での肺線維化を契機に診断される場合もある。画像検査による所見は特発性肺線維症(IPF)と類似しており、線維化抑制を目的とした治療がなされる場合もあるが、過敏性肺炎はアレルギー反応に基づく疾患であり、その治療において原因抗原の除去は極めて重要である3)。実際に、原因抗原が特定された場合では原因特定に至らない場合にくらべて予後が良好であったとの報告もある4) 。 鳥関連過敏性肺炎では、原因抗原には飼育する鳥や住居環境(自宅の近くに鳥が多い環境があるなど)、羽毛布団、ダウンジャケット、剥製、鶏糞肥料など挙げられるが、慢性型の多くは羽毛布団の使用など、直接の鳥の接触に依らないことが多く、このために原因抗原の特定、除去が遅れ、無自覚な抗原暴露の継続により適切な治療に至らずに肺の線維化が進行している場合もある3)5)6)7)。 過敏性肺炎の診断には、臨床像、発症環境、免疫学的所見、吸入誘発試験、病理学的所見からなる診断基準が示されているが、このうちの免疫学的所見に含まれる抗原に対する特異抗体の陽性反応は疾患の原因抗原を特定する上で重要である8)。2020年にATS/JRS/ALATの3学会が合同で発表した本症診療ガイドライン“Diagnosis of Hypersensitivity Pneumonitis in Adults”においても、推奨度は低いものの原因抗原検索およびその暴露評価の手段として血清IgG検査の実施が提案されている(suggestion, very low confidence in the estimated effects)9)。 本邦の診断基準においては、一定期間の入院による抗原回避での症状消失の確認後に、再度発症環境での反応をみる環境誘発試験や、一部の専門施設の場合には実際に抗原を吸入した後の反応をみる吸入誘発試験が最も信頼性の高い診断法とされているが、これらの診断法には症状再現率が必ずしも高くないという問題や、身体的負担が大きく、また特に吸入誘発試験は患者の症状増悪を誘発するリスクがある。 イムノキャップ 特異的IgG 鳥は、蛍光酵素免疫測定法(FEIA 法)により血清中又は血漿中の鳥抗原に対する特異的免疫グロブリンG(IgG)を測定し、鳥関連過敏性肺炎の診断を補助する検査キットである。血清または血漿を検体とする血液検査であるため、採血時の痛み以外に患者に負担を与えることのない低侵襲性の検査であり、また客観的な指標を提供できる簡便な検査法である。なお、当社が実施した臨床性能試験の成績は以下の通りである。 ・急性発症群:急性鳥関連過敏性肺炎/再燃症状軽減型慢性鳥関連過敏性肺炎と診断された46症例においてセキセイインコ抗原及びハト抗原の両者を組み合わせて判定した結果 臨床的感度:87% (40/46) 、臨床的特異度:77% (49/64)、診断効率:83% (91/110) 陽性的中率:75% (40/53) 、陰性的中率:89% (51/57) ・潜在性発症群:潜在性発症型慢性鳥関連過敏性肺炎と診断された29症例においてセキセイインコ抗原及びハト抗原の両者を組み合わせて判定した結果 臨床的感度:31% (9/29)、臨床的特異度:77% (49/64)、診断効率:62% (58/93) 陽性的中率:38% (9/24)、陰性的中率:71% (49/69) ※対照疾患群:鳥関連過敏性肺炎を除くびまん性肺疾患と診断された64症例(特発性間質性肺炎15症例、特発性肺線維症4症例、膠原病を伴う間質性肺炎24症例、夏型過敏性肺炎10症例、加湿器肺(過敏性肺炎:1症例)、その他の呼吸器疾患10症例) |
留意事項 | 診察又は画像診断等により鳥関連過敏性肺炎が強く疑われる患者を対象として、EIA法により、鳥特異的IgG抗体を 測定した場合は、本区分の「52」抗トリコスポロン・アサヒ抗体の所定点数を準用して算定する。なお、本検査が必要と判断した医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。 |
参考資料 | 1)宮崎泰成, 稲瀬直彦. 過敏性肺炎の病態と治療の最前線. 日内会誌, 2017: 106: 1212-20. 2)宮崎泰成. 過敏性肺炎. 間質性肺炎を極める. 株式会社メジカルビュー社, 2012: 235-42. 3)土屋公威, 稲瀬直彦. I アレルギー 過敏性肺炎. アレルギー・リウマチ膠原病診察最新ガイドライン. 総合医学社,2012: 65-9. 4)Evans R. Fernandez Perez et al. Identifying an Inciting Antigen Is Associated With Improved Survival in Patients With Chronic Hypersensitivity Pneumonitis. CHEST 2013; 144(5): 1644-51. 5)宮崎泰成, 稲瀬直彦. V アレルギー性疾患 過敏性肺炎 慢性過敏性肺炎. 別冊 日本臨床 新領域別症候群シリーズNo.35 免疫症候群(II) その他の免疫疾患を含めて. 改訂第2版. 日本臨床社, 2016: 304-8. 6)土屋公威, 稲瀬直彦. V. アレルギー性疾患 過敏性肺炎 鳥関連過敏性肺炎(鳥飼病). 別冊 日本臨床 新領域別症候群シリーズNo.35 免疫症候群(II) その他の免疫疾患を含めて. 改訂第2版. 日本臨床社, 2016: 309-12. 7)稲瀬直彦, 他. 鳥関連過敏性肺炎の診断における鳥特異抗体. 日呼吸会誌, 2011: 49: 717-22. 8)稲瀬直彦. 教育講演7. 過敏性肺炎の診断と治療. 日内会誌, 2014: 103: 2269-74. 9)G. Raghu et al. Diagnosis of Hypersensitivity Pneumonitis in Adults. An Official ATS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2020; 202(3): e36-69. |
文責:サーモフィッシャーダイアグノスティックス株式会社/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会 |