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検査値を表す単位には、質量の単位(g、mg、μgなど)、体積の単位(L、 dL、 mL、…Lなど)、割合の単位(%、‰)、物質量の単位(mol、 mEqなど)、そしてArbitrary Unit(任意の単位)などがあります。日常診療では、これらの単位を組み合わせて、たとえば、質量や物質量の単位と体積の単位を用いたg/L、mg/dL、μg/dL、mEq/L、mmol/Lなどのように検査値を表しています。
1960年の第11回国際度量衡総会において、それまでのメートル法に代わって、新しく国際単位系((LeSystème International d,Unités;以下SIと略)が採用されました。わが国では、1992年に計量法が改正され、国際的に合意されたSI単位が全面的に採用されることになりました。SI単位系には、7つの基本量の単位(長さ:メートル[m]、質量:キログラム[kg]、時間:秒[s]、電流:アンペア[A]、熱力学温度:ケルビン[K]、光度:カンデラ[cd]、物質量:モル[mole])がありますが、検査値でよく用いられる体積、密度、酵素活性(触媒活性)、そして物質量濃度はSI組立単位に含まれます。組立単位は、7つの基本単位と2つの補助単位を用いて、乗除算の代数的な方法で表します。体積は立方メートル[m3]、密度はキログラム毎立方メートル[kg /m3]、そして物質量濃度はモル毎立方メートル[mol/m3]とSI基本単位を組み合わせて表します。いくつかのSI組立単位には、利便性の観点から固有の名称と記号が与えられていますが、酵素活性(触媒活性)の単位記号は[カタールkat]でモル毎秒[mol /s]が基本単位による表し方になります。体積のリットル[ l ]は、実用上の重要さからSI単位と併用できるSI以外の単位として使用が認められていますので、物質量濃度を表す検査値はSI単位としてmol/lが使用されます。
酵素活性の単位(国際単位International Unit; IU)は、1964年に国際生化学連合が「至適条件下、温度30℃で毎分1μmolの基質を変化させることができる酵素量(1マイクロモル毎分)」と定義しました。「国際単位」(International Unit)という名称が用いられていますが、SI単位とは無関係であり、1999年に1モル毎秒に相当するカタール(記号:kat)がSIに導入され、ユニットはカタールに置き換えることが推奨されています。
わが国では医療機関の機能分担と連携が進められていますが、患者の検査情報の共有化が重要であり、測定方法の標準化とともに基準範囲の共有化が待望されていました。日本臨床検査標準協議会が中心になって「共用基準範囲案」が作成され、公開されました。「共用基準範囲一覧」に示された項目の単位はSI単位表記ではありませんが、英語表記の一覧はSI単位が使用されていますので、比較していただくと違いが理解できると思います。
臨床検査分野においてSI単位が全面採用されるまでには、まだしばらく時間が必要と思われます。
●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。