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検査の豆知識

尿検査でわかること ―定性検査と沈査―[ラボ NO.560(2025.9.発行)より]

尿検査とは?

尿検査は、身体の健康状態を把握するための基本的かつ重要な検査方法です。その中でも、定性検査と沈渣検査は、それぞれ異なる視点から尿の状態を評価し、病気の早期発見や診断に役立ちます。

尿定性検査とは?

尿定性検査は、尿試験紙を用いて尿中の化学成分を調べる簡便な方法です。この検査では、糖、タンパク質、血液、亜硝酸塩などの有無を確認することができます。例えば、糖尿病では尿中に糖が検出されることがあり、腎疾患ではタンパク尿が見られることがあります。
しかし、定性検査は化学反応に基づいているため、結果が必ずしも正確でない場合があります。例えば、潜血反応が陽性であっても、それが必ずしも血尿を意味するわけではありません。赤血球以外の成分、例えばヘモグロビンやミオグロビンによって陽性反応が出ることもあるためです。

尿沈渣検査とは?

尿沈渣検査は、尿を遠心分離して沈殿物を顕微鏡で観察する方法です。この検査では、赤血球、白血球、細菌、結晶、円柱などの微細な成分を直接確認することができます。例えば、赤血球の形状を観察することで、血尿が腎臓由来か膀胱由来かを推測することが可能です。
腎臓由来の血尿では、赤血球が変形していることが多く、さらにタンパク尿や赤血球円柱が見られる場合があります。また、膀胱炎では白血球や細菌が確認されることが多く、これにより確定診断が可能となります。
沈渣検査では、円柱と呼ばれる構造物も重要な観察対象です。円柱は、腎臓内の尿細管で形成されるタンパク質の鋳型であり、腎疾患の診断において重要な手がかりとなります。例えば、赤血球円柱は腎臓での出血を示唆し、膀胱や尿道での出血では見られない特徴的な所見です。

尿検査を行う際の注意点は?

尿検査を行う際には、適切なサンプルの採取と迅速な検査が求められます。特に朝一番の尿は濃縮されており、検査に適していますが、長時間放置すると細胞が変形したり、細菌が増殖したりする可能性があるため注意が必要です。また、尿の酸性度やアルカリ性によって結晶の種類が異なるため、これも考慮に入れる必要があります。
尿検査は非侵襲的で患者への負担が少ない検査でありながら、腎臓や尿路系の疾患だけでなく、全身の健康状態を評価する上でも非常に有用です。定性検査と沈渣検査を組み合わせることで、より正確な診断が可能となり、適切な治療への道筋を示すことができます。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。