SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出 Illumina(R) COVIDSeq(TM) テスト
令和 2年 12月8日より保険適用 | D023 微生物核酸同定・定量検査 区分E1(既存) SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出 |
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出 Illumina(R) COVIDSeq(TM) テスト |
保険点数 | ・採取した検体を、国立感染症研究所が作成した「感染性物質の輸送規制に関するガイダンス 2013-2014 版」に記載されたカテゴリーB の感染性物質の規定に従って、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合:1,800 点 ・それ以外の場合:1,350点 |
製品名 | Illumina(R) COVIDSeq(TM) テスト |
製造販売元 | イルミナ株式会社 |
使用目的 | 生体試料中のSARS-CoV-2 RNAの検出(SARS-CoV-2感染の診断の補助) |
使用目的に関連する使用上の注意 | 添付文書の【臨床的意義】、【操作上の注意】の内容を熟知し、本品の有用性を理解した上で検体種を選択すること。 |
測定方法 | 次世代シークエンス法 |
検 体 | 鼻咽頭ぬぐい液 ※ 検査に用いる検体については、厚生労働省より公表されている「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針」を参照してください。 |
有 用 性 | SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2)はコロナウイルス属に含まれ(1)、新型コロナウイルスという呼称でも広く知られている。 コロナウイルスはヒトに感染することで季節性の流行性感冒から中東呼吸器症候群( MERS/Middle East Respiratory Syndrome)や重症急性呼吸器症候群(SARS/Severe Acute Respiratory Syndrome)を含む重篤な感染症に至るまで、様々な呼吸器系疾患を引き起こす。SARS-CoV-2 はCOVID-19(Coronavirus Disease 2019)を引き起こし(1)、大多数の感染症例においては中等度の呼吸器症状を伴う。また、一部の感染症例においては無症候(不顕性感染)であることも確認されている(2)。しかしながら、基礎疾患を有する患者及び高齢者に対しては、COVID-19 は重症化する危険性がある(2)。ヒト-ヒト間におけるSARS-CoV-2 の主要な伝染経路には、唾液の飛沫を含む呼吸器系を介するもの、そして感染者の排泄物を介するも のとがある。したがって、SARS-CoV-2 の検出は感染者を同定して適切な治療等を早期に施すことに役立ち、感染拡大の防止のみならず重篤化しやすい高齢者などの感染予防の観点 からも重要である。 本品は、Illumina(R) COVIDSeq(TM) Test として 2020 年 6 月に米国医薬品食品局(FDA/Food and Drug Administration)による緊急使用許可(EUA/Emergency Use Authorization)を取得した SARS-CoV-2 RNA の検出を目的とする次世代シークエンス(NGS/ Next Generation Sequencing)法キットである(3)。測定原理は以下のとおりである。 検体から抽出した RNA に対する逆転写産物を鋳型として、SARS-CoV-2 ゲノム RNA 全⾧をカバーするような 98 種類のアンプリコンを PCR により増幅する。 アンプリコンを精製後、DNA ライブラリーを調製し、専用の NGS システムを用いてDNA 配列を決定する。そして、検出されたウイルス由来アンプリコン数をカウントし、その結果をもとに SARS- CoV-2 由来の RNA の有無を判定する。このとき、内在性コントロールとしてヒト由来mRNA を同時に検出するため、RNA 抽出時の問題など PCR による増幅の失敗に起因する偽陰性の判別も検体ごとに可能である。 本品の臨床性能を評価するため、米国 EUA 標準法であるCDC 2019-Novel Coronavirus (2019-nCoV)リアルタイム RT-PCR 診断パネルとの相関性試験を行った。その結果、鼻咽頭ぬぐい液検体(77 例)について、陽性一致率 100%、陰性一致率 97.3%となった。 保険適用時点において、本品は SARS-CoV-2 の検出に用いられる唯一の NGS 法を測定原理とする体外診断用医薬品である。上記のとおり、米国 EUA 標準法と比較しても同等の臨床性能を有することから、COVID-19 の診断に有用であると考えられる。 |
留意事項 | SARS-CoV-2核酸検出は、国立感染症研究所が作成した「病原体検出マニュアル2019-nCoV」に記載されたもの若しくはそれに準じたもの又は体外診断用医薬品のうち、使用目的又は効果として、SARS-CoV-2の検出(COVID-19の診断又は診断の補助)を目的として薬事承認又は認証を得ているものにより、COVID-19の患者であることが疑われる者に対しCOVID-19の診断を目的として行った場合又はCOVID-19の治療を目的として入院している者に対し退院可能かどうかの判断を目的として実施した場合に限り算定できる。ただし、感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするための積極的疫学調査を目的として実施した場合は算定できない。なお、検査に用いる検体については、厚生労働省の定める新型コロナウイルス感染症の検査に係る指針を参照すること。 採取した検体を、国立感染症研究所が作成した「感染性物質の輸送規制に関するガイダンス2013-2014版」に記載されたカテゴリーBの感染性物質の規定に従って、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合は、本区分の「14」SARSコロナウイルス核酸検出の所定点数4回分を合算した点数を準用して算定し、それ以外の場合は、同点数3回分を合算した点数を準用して算定する。なお、採取した検体を、検体採取を行った保険医療機関以外の施設へ輸送し検査を委託して実施した場合は、検査を実施した施設名を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。 COVID-19の患者であることが疑われる者に対し、診断を目的として本検査を実施した場合は、診断の確定までの間に、上記のように合算した点数を1回に限り算定する。ただし、発症後、本検査の結果が陰性であったものの、COVID-19以外の診断がつかず、本検査を再度実施した場合は、上記のように合算した点数をさらに1回に限り算定できる。なお、本検査が必要と判断した医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。 COVID-19の治療を目的として入院している者に対し、退院可能かどうかの判断を目的として実施した場合は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」(令和2年6月25日健感発0625第5号)の「第1 退院に関する基準」に基づいて実施した場合に限り、1回の検査につき上記のように合算した点数を算定する。なお、検査を実施した日時及びその結果を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。 また、体外診断用医薬品としての使用目的の範囲外であるため、保険適用外ではあるが、検出に際して 90 個以上のアンプリコンがカウントされた検体については、検出されたSARS-CoV-2 ゲノムのコンセンサス配列を得ることができる(4,5)。 |
参考資料 | 1)World Health Organization (WHO) “Naming the coronavirus disease (COVID-19) and the virus causes it”, 2)厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第 4.1 版」, 入手先 https://www.mhlw.go.jp/content/000712473.pdf 3)First NGS-based COVID-19 diagnostic. Nat Biotechnol 2020; 38: 777. 4)Bhoyar RC, Jain A, Sehgal P, et al. High throughput detection and genetic epidemiology of SARS-CoV-2 using COVIDSeq next-generation sequencing. PLoS One 2021; 16(2): e0247115. 5)Radhakrishnan C, Divakar MK, Jain A, et al. Initial Insights Into the Genetic Epidemiology of SARS-CoV-2 Isolates From Kerala Suggest Local Spread From Limited Introductions. Front Genet 2021; 12: 630542. |
製品関連URL | https://jp.illumina.com/company/news-center/press-releases/2020/jp201215pr.html |
文責:イルミナ株式会社/監修:日本臨床検査医学会臨床検査点数委員会 |