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1食事の影響を受ける検査はどのような意義がありますか?
本来、血清の濃度や活性のレベルは、生体内の恒常性維持に基づき一定の範囲内で安定しています。各測定値の日内変動に留意したデータ解釈が大切です。その日内変動のなかで、睡眠、食事、身体活動などが測定値に影響を及ぼすことがあります。なかでも例えば、食後に値が上昇する代表例がトリグリセライド(TG)値や血糖値ですが、カットオフレベルを超える食後高脂血症(食後高 TG 血症)や食後高血糖などは、動脈硬化性疾患の危険因子としても重要な意味を持ちますので、関連するガイドラインを参考に対応する必要があります。
2食事で高値となる検査
TG、血糖、インスリン、アルカリホスファターゼ(ALP)などで、食後に値が上昇します。TG や血糖は、食事に含まれる脂肪や糖質が、小腸から吸収されて血中に移動することによって上昇します。インスリンは、血糖を低下させるホルモンですが、食後に血糖が上昇すると、血糖を元のレベルに戻すため、すなわち血中の糖を細胞内に取り込ませてエネルギー代謝のプロセスに進むために膵臓(β細胞)から分泌されます。ALP は、肝機能障害、胆石や骨の病気などで上昇する酵素です。血液型が B 型または O 型の人では食後に小腸型アイソザイムの分泌が増えるので、ALP 活性値が上昇します。すなわち病的意義はありません。またIFCC 法での ALP 測定では小腸型による影響は少ないです。上昇の程度には個人差が大きく、食事の脂肪分が多い場合に、よりはっきりするようです。このような条件に当てはまる場合は、空腹時に再検査をすることをおすすめします。また血清クレアチニン値も肉類など高たんぱく質の食事により食後上昇することがあるので、腎機能評価の際は注意してください。
3食後で低値となる検査
TGが分解されて生成される遊離脂肪酸(NEFA)は、食後に値が低下します。脂肪組織に蓄えられているTGは、空腹時に分解されてエネルギー源として使われますが、食事により吸収された糖質などがエネルギー源に利用されるので、脂肪組織のTGの分解が不要になります。したがって、NEFAは空腹時で濃度が高く、食事をとると低下します。また、この食事摂取エネルギーのバランスから空腹時ではケトン体が増えますが、食事によりケトン体が減ります。その他として、一般的にはインスリンの作用などにより、血中の無機リンは細胞内に移行するので、無機リン値は食後に低下します。一方、無機リンは有機リンと比べて小腸で吸収されやすいので、腎不全の患者さんの場合では、無機リンを多く含む加工食品・インスタント食品などの食後は無機リンの測定値は要注意です。また血清亜鉛値は午前中に高く、午後にかけて低くなりますが、これにも食事の影響があります。血清亜鉛値は空腹時に上昇し、食後2、3時間後に20%ほど低下します。
●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。