1. HOME
  2. 一般の方へ
  3. CRP[ラボ NO.554(2025.3.発行)より]

一般の方へ

Guests

見逃せない検査異常

CRP[ラボ NO.554(2025.3.発行)より]

PSAとは?

PSA は前立腺特異抗原(Prostate specific antigen)といわれ、前立腺に局在するセリンプロテアーゼです。男 性の精巣に多く存在し、機能は射精後のゼリー状の精液を液状化するときに関連する酵素と考えられています。一部が血液中に流出して検査で測定されます。

基準値は?

50 歳以上の男性では、前立腺がんのスクリーニング検査として使われています。基準値は 4ng/ml 未満となっており、これを超える場合は検査異常値とされています。ただし、前立腺は加齢に伴って肥大する傾向があり、50~64歳は3.0ng/ml、65~69歳は 3.5ng/ml、70歳以上で4ng/mlと年齢により判断することが推奨されています(前立腺がん検診ガイドライン2018年版より)。10ng/mlを超える場合は、がんが強く疑われるので注意が必要です。

異常値になる原因は?

異常値になる原因の一つは、前立腺が機械的に刺激されることにより分泌が増加します。一般的なものとして、サイクリングや車の運転など長時間の座位で増加します。また射精時も一過性に増加することがあるので、検査を受ける場合は数日間の射精を中止しましょう。
良性なものでは尿道カテーテル、膀胱鏡検査、前立腺生検、手術など前立腺を刺激する処置や、急性尿閉、前立腺炎、前立腺肥大などの疾患で上昇します。悪性疾患では前立腺がんがあります。女性ではほとんど上がりませんが、一部の乳腺疾患で上がることが報告されています。女性ではスクリーニング検査は行われていませんが、異常値になる場合は注意が必要です。

検査結果の注意点

前立腺肥大症や男性型脱毛症の治療薬として使用されている 5α還元酵素阻害薬は血清PSA 値が低く出ることがあります。スクリーニング検査としては正確度が下がりますので注意が必要です。また PSA は加齢で増加する傾向があるため、経時的な検査が推奨されています。急激な変化が見られた場合は精密検査を行いましょう。
そのほかに、PSA は血液中では遊 離 型、α2 マクログロブリンとの結合型、そして大部分はα1 アンチキモトリプシン(ACT)と結合しているものが存在しています。がんでは ACT と複合体を形成している比率が高くなる傾向があり、同時に検査を実施すると良性疾患との鑑別に役立ちます。

早期限局性の前立腺がんの 5 年生存率は非常に高く、発見が遅れ転移などで発見された場合の生存率は 3 分の 1以下になるとの報告もあります。50 歳以上の男性は定期的なスクリーニング検査を行い、変化がある場合は泌尿器科への受診をおすすめします。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。