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心電図検査①(虚血性心疾患)[ラボ NO.550(2024.11.発行)より]

虚血性心疾患とはどのようなものですか ?

心臓は心筋と呼ばれる厚い筋肉で形作られており、心筋が収縮と拡張を繰り返すことで全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。心臓は全身の臓器に血液を供給しますが、心筋そのものにも血液を供給しており、これは心臓を取り巻く冠動脈によってなされます。
動脈硬化などにより冠動脈が狭くなったり閉塞したりすると、心筋に十分な血液が供給されないという状況が生じます。これを心筋虚血といい、心筋虚血による心臓疾患を虚血性心疾患といいます。代表的な虚血性心疾患には狭心症と心筋梗塞があります。
狭心症は、冠動脈が狭くなることで心筋に供給される血液が不足し、一時的に心筋が酸素不足に陥って胸の痛みや圧迫感を引き起こす状態をいいます。狭心症は、血流不足はあるものの心筋が壊死するまでには至っていない状態ですが、一方心筋梗塞は、冠動脈が閉塞して心筋に供給される血液が途絶え、心筋が壊死に陥った状態をいいます。

虚血性心疾患の心電図変化にはどのようなものがありますか ?

正常の心電図波形を図左側に示します。最初の小さな波(P波)は心房の興奮を表します。P波の次の鋭い高い波は心室の興奮を示す部分で、最初に現れる下向きの波をQ波、上向きの波をR波、R波の後に現れる下向きの波をS波と呼び、これらを総称して QRS群といいます。QRS群が出現すると心室が収縮して血液が心臓から送り出され、脈として1回触れます。QRS群のS波の終わりからT波の始まりまでを ST部分といい、ST部分に続く勾配がゆるやかな波をT波といいます。ST部分とT波は心室の興奮からの回復過程を反映しますが、虚血性変化はこの部分に現れます。
ST 部分の変化には ST低下と ST上昇の2つがありますが、通常健康診断で虚血性変化として指摘されるのはST部分の低下(図右側)です。

健康診断の心電図で虚血性変化ありと指摘されました

健康診断の心電図で虚血性変化ありと指摘されたら、まず診断を確実にすることと、虚血の程度をみることが重要です。このために運動負荷心電図、心臓超音波検査、心臓核医学検査などが行われます。結果によっては冠動脈造影検査が必要となる場合もあります。またそれだけでなく、虚血性変化を生じさせる動脈硬化の危険因子の有無をチェックすることも重要です。高血圧、喫煙、脂質異常、糖尿病が主なものです。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。