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血液検査データのうち、総蛋白(TP)とアルブミン(Alb)は、それぞれ血液中に含まれる蛋白の総量と肝臓で作られるアルブミンの量を意味しています。アルブミンは、総蛋白の約3分の2を占める重要な蛋白で、主に栄養状態の指標となります。残りの蛋白はグロブリン(Glb)と呼ばれるたくさんの種類の蛋白の総称で、
総蛋白=アルブミン+グロブリン
という関係があります。グロブリンは、IgGやIgMなどの抗体に代表される免疫グロブリンが主な蛋白で、種々の炎症で増加します。したがって、総蛋白は、栄養指標と炎症指標の和ととらえることができます。総蛋白とアルブミンは臨床検査で簡単に測定することができますが、グロブリンはたくさんの蛋白の集合体なので、
グロブリン=総蛋白-アルブミン
として計算で求めることができます。以上のように求められるアルブミンとグロブリンの比(A/G比)は、臨床的に重要な指標になります。すなわちA/G比の低下は、アルブミンが低下して栄養が悪い状態か、グロブリンが増加して炎症状態が長引いている状態かのいずれかまたは両方を意味し、いずれにしろ患者さんの状態があまりよくないことを意味するのです。
総蛋白の低下は、アルブミンの低下かグロブリンの低下のいずれかで起こります。免疫グロブリンが作られない「無ガンマグロブリン血症」でグロブリンが低下しますが、これは非常に稀な遺伝性疾患で、ほとんどはアルブミンの低下が原因で総蛋白低下が起こります。
アルブミンの低下は、栄養不足や「肝硬変」など肝臓の働きが悪いときだけではなく、腎臓から尿中へ蛋白が失われる「ネフローゼ症候群」や小腸から便中に蛋白が失われる「蛋白漏出性胃腸症」でも起こります。また、甲状腺ホルモンの異常分泌で代謝が亢進する「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)」でもアルブミンは代謝(分解)されて低下します。
反対に総蛋白が増加する病気もあります。「多発性骨髄腫」という病気では、増殖したリンパ球(Bリンパ球)からある種の免疫グロブリン(M蛋白)が異常に合成され全体の蛋白量が増加します。
このように総蛋白とアルブミンは、その検査結果から臨床的に非常に有用な情報が得られ、患者さんの状態評価や色々な疾患診断の補助として利用されています。
●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。