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見逃せない検査異常

腫瘍マーカー:CEA[ラボ NO.552(2025.1.発行)より]

腫瘍マーカーは何を調べる検査ですか?

腫瘍マーカーとは、血液や尿中に含まれる物質のうち、その物質の量を測定することで、悪性腫瘍の存在や種類を推測できるものを指します。悪性腫瘍が産生する蛋白質や腫瘍細胞に対して産生される抗体などがこれにあたります。今回のテーマである CEA も、血液検査で測定することができる腫瘍マーカーのひとつです。

CEA とはどんな腫瘍マーカーなのですか?

CEAは癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen)の略で、胎児の段階で消化管粘膜にあったものが出生時には非常に少なくなるため、通常は血液検査では測定されません。ある種の悪性腫瘍では、このCEAが腫瘍細胞から産生されるようになるため、血液検査で測定値が高くなります。
CEAは大腸がんの診断目的で開発されていますが、大腸がん以外でも胃がん、膵臓がん、胆管がん・胆道がんなどの消化器系の悪性腫瘍で高値になることが多いです。その他に肺がん、乳がん、子宮頸がん、甲状腺がんなどでも高値となることが知られています。カットオフ値は 5.0 ng/mL とされていることが多く、この数値を超えた場合には悪性腫瘍を含めた何らかの原因があると考えて、詳しい検査をするきっかけとなります。

CEA を測定することで悪性腫瘍の診断はできますか?

CEAに限らず、腫瘍マーカーは悪性腫瘍であっても上昇しないことや、逆に悪性腫瘍以外でも上昇することがあるため、腫瘍マーカーだけで悪性腫瘍の診断はできません。あくまで悪性腫瘍が疑われた際の補助診断のひとつと考えられます。
例えば、人間ドックの胃カメラの検査で異常があった場合や、便に血液が混じった場合などに検査を行うことで悪性腫瘍の可能性の高さを判断し、追加での精密検査の種類や必要性を判断することができます。また腫瘍マーカーの値は腫瘍の進行度や治療によっても変動するので、術前の進 行度の予測や、治療効果判定、再発の早期診断などの参考になることがあります。ただし、他の原因で変動することがあるため、腫瘍マーカー以外の検査(画像検査、病理検査など)と総合的に判断をする必要があります。
悪性腫瘍以外に CEAが高値となる原因として、糖尿病、肝硬変、炎症性疾患などの基礎疾患の存在や、加齢や高度の喫煙などがあげられます。このような理由から、CEAはがん検診の推奨項目とはなっていません。仮に人間ドックなどで CEA を測定して陽性となった場合でも、CEAの数値だけでは悪性腫瘍の有無はわかりませんので、かかりつけ医に相談していただき、必要があれば精密検査を受けることが望ましいです。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。