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見逃せない検査異常

電解質(Na、K、Cl)[ラボ NO.547(2024.8.発行)より]

電解質とは?

水に溶けると電子を放出あるいは取り込むことで電荷をもった粒子(イオン)となる物質を電解質と呼びます。
電子はマイナス電荷をもつので、電子を取り込めば陰イオン、電子が奪われると陽イオンとなります。Na原子は、原子核に11個のプラスの電荷をもつ陽子をもち、その周りに電子が11個存在しています。電子は存在する数が軌道により決まっていて、11個目の電子はいちばん外側の軌道に1つだけ存在しています。この電子が外れるとナトリウムイオンNa+となります。Cl原子ではいちばん外側の軌道の空きがあり、電子を取り込み塩化物イオンCl-ができます。体液には Na+K+Cl-、重炭酸イオン、リン酸イオン、Ca2+Mg2+など多くのイオンが存在し、それぞれの機能を果たしています。通常、血液検査で測定している電解質は、細胞外液の濃度を測定しています。図に示すように、細胞内の電解質と細胞外の電解質の組成は大きく異なります。また、生体が正常に機能するためpH が一定に保たれる必要があり、細胞外液では重炭酸イオンが、細胞内液ではリン酸イオンがその調節の役割を果たしています。

Na+K+Cl-それぞれの働きは?

生体内の生理反応は最適のpHと最適の電解質濃度の環境下で行われます。Na+は細胞外液で最も多い陽イオンで、細胞外液の浸透圧を形成する主要な成分です。Na+濃度はわずかな変化であっても浸透圧に大きく影響を及ぼします。Na+濃度が増加すると水分摂取を増し、また水の再吸収を増加させるため血液量が増え、血圧上昇の原因となります。K+は細胞内液の主要な陽イオンで、細胞内の浸透圧の維持、神経・筋肉の正常な機能に必要です。Cl-は主に細胞外液に存在し、浸透圧の調整やpH調節に関わっています。

Na+K+の濃度が異常となった際は?

低Na血症:Na+濃度が 130 mEq/L 以下。水分が過剰となった場合や、Na+の喪失で起きます。進行すると脳の正常な機能が妨げられ動作が緩慢となり錯乱し、重症となると痙攣を引き起こします。
高Na血症:Na+濃度が 148mEq/L以上。脱水やNa過剰投与によって起きます。口渇が強く、著しい高値では意識障害が起きます。
低K血症:K+濃度が3.5mEq/L 以下。ホルモン異常や利尿薬服用で起きます。神経・筋肉の機能が低下します。
高K血症:K+濃度が 5mEq/L以上。腎機能障害時のK+濃度調整機能不良が最も多い原因です。K+過剰の症状は心臓、神経、筋によく現れます。心臓への影響は特に大きく、不整脈から心停止にまで至るので直ちに補正する必要があります。

●日本臨床検査専門医会:種々の検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供する臨床検査医の職能団体です。