ASSOCIATION
専門医会のご案内
TOPICS
私は内分泌内科医ですが、複数分野に興味があり、臨床検査医学を第一の専門としていた時期があります。そして、その経験が私の視野を広げてくれたと実感しています。本稿を、これから専攻を選ぶ先生の参考にして頂ければ幸いです。
私は、大学卒業後母校に残り、内科学講座に入局して研修を受けました。
研究中に内分泌学の虜になり、学位取得後も臨床研究を継続すべく、当時の臨床検査医学講座の教授に相談しました。教授は甲状腺の専門家でもあり、極めて微量な生体内物質であるホルモンの、測定方法の開発や負荷検査評価の検討という、とても魅力的な研究をされていました。
皆さんは、臨床検査にどの様なイメージを持っていますか。当時の私の認識は、「患者さんを診ないで検査を実地する科」程度のものでした。入局後、臨床検査学会での発表や、学生教育の業務に伴い、自分自身が臨床検査を学ぶ必要に駆られました。そして遅まきながらも、私が実臨床で診断に用いる検査の一つ一つが、この分野に依存していたと自覚するに至りました。
臨床科においては、各疾患のガイドラインやマニュアル本が多く存在します。しかし実臨床において、患者さんの全ての検査結果を矛盾なく説明する事は、しばしば困難です。そのため、細分化が進むほど、別の診療科に結果の解釈を投げる傾向にあります。臨床検査は答えが存在する学問であり、異常値には病的、生理的、または人為的な因子という根拠があります。従って、臨床検査医は、臨床医が診療の場で異常値をみた時に、コンサルテーションできる医師であり、患者さんの全体像を把握するためのキーマンなのです。
臨床検査医学を知る程に世界が広がり興味が湧き、結果、検査部に出入りする様になり、臨床検査専門医の資格に挑戦しました。先生方、技師さん達の皆さんに多くの事を教えて頂きました。遺伝子検査部門に興味を持ち、臨床遺伝という分野を勉強し始めたのもこの頃です。 現在、内分泌代謝内科専門医、臨床遺伝専門医、そして臨床検査専門医のわらじを履きながら、臨床業務に従事しています(老後のQOLを考えて検査部に戻りたいと常に考えていますが、なかなか隙がありません)。
検査医学は、将来どの様な科を専攻するかに関わりなく、長きにわたり医師としての能力を育成してくれる、そして未来の多様な選択肢を与えてくれる領域です。臨床検査の世界を、是非いちど経験してみてください。